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日本図書館研究会研究例会(第294回)報告


日時:
2012年12月12日(水)19:00〜21:00
会場:
大阪市立弁天町市民学習センター第2研修室
発表者 :
加藤ひろの(吹田市立子育て青少年拠点夢つながり未来館山田駅前図書館山田分室)
村林麻紀(八尾市立八尾図書館)
テーマ :
高齢者一人一人の公共図書館へのニーズ
参加者:
17名

1.調査目的

 読書調査研究グループでは今までさまざまな層を対象に調査を行ってきたが,高齢者層の調査はまだであった。高齢者が総人口の4分の1を占める現在,公共図書館でも高齢者の利用が増えていると感じる。そのため,「特別に意識しなくとも高齢者は図書館を利用する」と考えがちである。また利用実態に関しては,「高齢男性が長時間新聞を読んだり,居眠りをしてばかり」といったイメージが語られる。しかし本当にそうなのだろうか。

 高齢者サービスについての詳細なレビューもあるが,高齢者の読書実態,利用実態,ニーズに関するものや生の声の調査は非常に少ない。そこで,現場の図書館員の視点から利用の実態を調べ,実際のニーズを知ることを調査の目的とした。

 高齢者と一般成人をことさら分けて考えなくても良いものなのか,従来の障害者サービスの発想で十分なのか,大活字本の提供さえしていればそれで良いのか。こうした疑問を出発点とした。

2.調査結果とそこから見えてきたこと

 一連の調査の結果,見えてきたことを要約すると次の2点が挙げられる。

 1)まだまだ図書館を利用していない高齢者が多い

 阿南市,茨木市,宝塚市の年齢別人口構成比と年齢別登録率を比較した結果,60代以降の登録の割合は,どの市でも人口に占める60代以降の割合より低くなっている。図書館で高齢者の利用が増えたとよく言われるが,人口構成比と比べれば,まだまだ図書館を利用していない高齢者が多いことが分かった。

 また,男女差についても興味深いデータが得られた。70代以降の女性の登録率が劇的に下がるのである。人口も全年齢の登録者数も女性の方が多いのに,70代女性の登録者数は少ない。

 このことは貸出に関しても言える。70代以降,特に女性の貸出が激減している。その年齢になると図書館の利用が困難になり,特に女性は孫の世話,介護,家事で忙しいのかも知れない。今回の調査では理由の特定まではできなかったが,いずれにしろ70代以降の年齢層の利用は全体的にまだまだ少なく,図書館側が図書館を利用する障壁となっていることを減らしていく努力が必要だと言える。

 なお今回の調査では,上記の3市のほかに,三木市の統計についても調査した。年齢別登録率についての三木市のデータは得られなかったが,これらの市を調査した理由として,高齢者サービスの先進館ではないが,利用者のニーズを重視した経営をしていることが挙げられる。そのような館において,高齢者のニーズをどのように捉えているのかを知ろうとした。

 2)高齢者コーナーは必要ない

 今回,調査対象は60歳以上とした。

 高齢者は多様である。60代と70代,80代以上でも違うし,男女でも違う。身体的な障害の有無による違いもある。また,大活字本や時代小説ばかりが利用されるわけでもない。文庫本,ハードカバーの好みも,地域により,個人により違う。自分を「高齢者」とは思っていない人も多い。

 これらのことを考えると,高齢者専用のコーナーを作るのは困難であろう。それよりも一人ひとりのニーズを丁寧に汲み取り,蔵書構成,日頃の接遇態度に生かし,それを積み上げてサービスを向上させる方が有用である。

 なお,今回の調査の詳細をお知りになりたい方は,研究例会で配布したレジメをお渡しできますので,ご連絡下さい。

 連絡先:yasmin@mte.biglobe.ne.jp(村林麻紀)

(記録文責:村林 麻紀 八尾市立八尾図書館)