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日本図書館研究会研究例会(第310回)報告


日 時:2014年12月18日(木)19:00〜21:00
会 場:大阪市立総合生涯学習センター第7研修室
発表者:是住久美子氏(京都府立図書館)
テーマ:「ししょまろはん」:図書館職員の自主学習グループによるオープンデータ活用事例
参加者:17名

はじめに
  「ししょまろはん」は京都府立図書館で働く図書館司書の職場内学習グループ。仕事外の活動。メンバーは
 16名であり,正規職員,非正規職員が半々の構成。2013年6月にグループを結成し,活動を開始した。
 京都府の自己学習活動支援事業を利用している。「ししょまろはん」のグループ名は京都府広報監(マスコッ
 トキャラクター)「まゆまろ」の「まろ」の前に「ししょ(司書)」を入れ,京都らしい敬称である「はん」
 を付けたもの。「ししょー」と「まろー」というキャラクターもいる。ホームページは,http://libmaro.
 kyoto.jp/, Twitterアカウントは「@shisyomaro_han」。
  「ししょまろはん」では,まずオープンデータを作って公開している。現在「京都が出てくる本のデータ」
 「図書館員が調べた京都のギモン〜京都レファレンスマップ〜」の2つ。また「京都まち歩きオープンデー
 タソン」に協力し,Wikipedia編集に役立つ資料の紹介などを行った。

「オープンデータ」とは
  関連する言葉について。まず「オープンデータ」とは,機械判読に適したデータ形式で,二次利用が可能な
 利用ルールで公開されたデータである。ティム・バーナーズ=リーはオープンデータのデータ形式において,
 5つ星スキームを提唱しており,まずはどのような形式であれ(PDFやJPEG等),ウェブ上に利用可能な形で
 公開されていることが重要で,次に機械判読が可能な形式(Excel等)だと2つ星。さらに特定のソフト等に
 制約されない形式(CSVやXML)であれば3つ星。5つ星として他のデータとリンクされたLinked‐RDFが推奨
 されている。また「クリエイティブ・コモンズライセンス」とは,「この利用条件を守れば自由に使っても
 良いですよ」という意思表示を世界標準のフォーマットで示す取組み。全6種類であり,特に「CC BY」
 「CC BY‐SA」がオープンデータとされる。非営利でのみ利用可能の場合はオープンデータと言えない。
  オープンデータに関する政府の動きとしては,2012年7月電子行政オープンデータの策定から。オープン
 データ流通推進コンソーシアムを設立し,2013年6月には世界最先端IT国家創造宣言を行い,同月電子行
 政オープンデータ推進のためのロードマップ策定,「G8オープンデータ憲章」を合意した。12月には,デ
 ータカタログサイト試行版「DATA.GO.JP」を開設した。
  オープンデータ世界ランキングでは,日本は19位(2013年は27位)。上位は欧州諸国が多く,米国は
 大統領令で推進している。日本の自治体では,福井県鯖江市,横浜市が先行している。近畿では,大阪市,神
 戸市,奈良市などが取り組み始めている。
  文化機関が持つ情報資源をオープン化する動きもあり,2013年にはOpen GLAM JAPANが設立された。欧州で
 は,「Europeana(ヨーロピアーナ)」という図書館や博物館,美術館等の2000以上の文化施設が持つ所蔵
 物2,500万件の様々なデータを一括検索できるポータルサイトがあり,注目されている。例えば,北斎で
 検索すると多くヒットする。パブリックドメインであることを明示するマークを付けており,検索を絞り込む
 こともできる。
  日本ではNII(国立情報学研究所)が総合目録データベースの書誌データを公開したり,国立国会図書館が書誌
 データや典拠データ,震災関連データを公開したりしている。国立国会図書館のページには解説もありわかり
 やすい。京都府立総合資料館は,「東寺百合文書WEB」で,説明文も合わせてCC BY形式でデータ公開したことが
 評価され,「Library of the Year 2014」を受賞した。

「ししょまろはん」の活動
  2013年6月にオープンデータ京都勉強会に参加し,オープンデータの理念について知ることができた。同
 月ししょまろはんを結成した。さて何をしようと考えたときに,京都市東山図書館の「東山区関連文学図書リス
 ト」を参考に,文学作品だけでなく,マンガやライトノベルを含めた京都府域版を作成し,オープンデータとし
 てWebで公開したいと思った。そこで,2014年1月に高橋徹さん(ATR Creative)を講師にオープンデータ
 の勉強会を行った。その縁で,オープンデータ京都実践会やインターナショナルオープンデータデイ(京都)に
 協力した。
  2014年2月にLinkData.orgのサイトで「京都が出てくる本のデータ」をまず30件公開した。はてなニュ
 ース,カレントアウェアネスや京都新聞で取り上げられた。書誌情報はもちろん,1作品につき1か所京都のス
 ポットを登録する形で緯度と経度を加え,オススメ度や内容紹介を加えて紹介している。現在全レコード件数2
 01件。小説43,ライトノベル6,マンガ52タイトル。マンガは京都国際マンガミュージアムの年数回の無
 料観覧日に朝から行って調べ,例えば「ゴルゴ13」130巻,「こちら葛飾区亀有公園前派出所」100巻に
 も京都が登場していることがわかり入力した。ミステリーは84タイトルあるが,山村美紗が中心で,それだけ
 でもまとめて「京都が出てくる山村美紗作品データ」として公開している。その他エッセイや児童書なども少し
 ある。データ登録の方法としては,メンバーでGoogleスプレッドシートを共有して,各自が入力する形にしてい
 る。パソコンが苦手だったり持っていないメンバーのために,紙の様式も用意している。若いメンバーでも意外
 と紙の利用が多い。記入してもらった分を他のメンバーが入力する。
  「京都が出てくる本のデータ」は,書誌情報,カテゴリ,京都度,心境,内容紹介(140字以内),作品に
 出てくる場所の緯度経度・説明,Web NDL Authoritiesの著者名典拠URIまでを入力する。このGoogleスプレッド
 シートをLinked DataのサイトでRDF形式に変換してクリエイティブ・コモンズライセンスCC‐BYで公開した。そ
 れがスマホ用アプリ「ご当地なび」のコンテンツとなったので嬉しかった。作品の舞台まで経路案内が出たりす
 る。
  「図書館員が調べた京都のギモン〜京都レファレンスマップ〜」は,レファレンス協同データベースから京
 都に関するレファレンス事例を,手作業で検索して登録している。質問文の引用とレファ協の該当ページのURL,
 提供館名,レファレンスで対象となっている地点の位置情報などを入力する。地点については追加でレファレン
 スをしてから公開することもあり,自分たちのレファレンスの勉強にもなっている。「京都が出てくる本のデー
 タ」と同様の方法で公開し,現在162件である。
  ししょまろはんは,オープンデータ京都実践会が企画する「京都まち歩きデータソン」というイベントへも協
 力しており,これまで京都府立図書館等を会場にして計6回行った。まち歩きを行い,そこで得たまちの情報を
 Wikipediaに編集する「Wikipediaタウン」とまちの地図を作る「OpenStreetMapマッピングパーティ」を主に行
 なうイベント。OpenStreetMapはWikipediaの地図版ともいわれていて誰でも自由に編集,利用できる地図のこと。
 WikipediaもOpenStreetMapもオープンデータの仲間として,オープンデータ関連のイベントで取り組まれること
 が増えてきている。イベントでは毎回テーマを設けて行い,それぞれ詳しい方も来てもらって先生役となっても
 らう。そこでししょまろはんは,地域情報の調べ方,図書館の使い方,著作権についてのレクチャー,関連資料
 の提供などを行った。琵琶湖疏水記念館の項目では,Wikipediaに新規に琵琶湖疏水記念館のページを作り,Ope
 nStreetMapでも琵琶湖疏水記念館の登録を行い,相互にリンクを貼った。2月21日のインターナショナルオー
 プンデータデイには,京都でお寺(永運院)を借り切って開催する。
  他に,勤務中にポストや郵便局の場所をよく聞かれるので,印刷して渡せる地図をOpenStreetMapで作成した
 (Google Mapsを無断でプリントアウトして配布することは規約上禁じられている)。

今後の目標
  ししょまろはんとしては「京都が出てくる本のデータ」「図書館員が調べた京都のギモン〜京都レファレンス
 マップ〜」の地域版作成への協力を行いたい。様式を統一すれば「ご当地なび」のアプリに搭載してもらえる。
 また,京都府立図書館の職員としては,図書館自体の情報(写真,統計等)や職員が作成したコンテンツ(パス
 ファインダー,テーマ別リスト等)にCCライセンスを付けて公開することを提案したい。今,府立図書館の公式
 行事としてししょまろはんの活動を紹介するパネル展示を行っており,館内勉強会でも話す予定がある。活動を
 広めていきたい。
  講演後,活発な質疑応答が行われた。実際の本の登録に関する質問や,私的なグループであるがゆえの良さや
 取組形態,モチベーションの保ち方について,また実際の仕事との関わりについての質問があった。
                                  (文責:河西聖子 精華町立図書館)