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日本図書館研究会研究例会(第317回)報告


日 時:2015年12月21日(月)19:00〜21:00
会 場:大阪市難波市民学習センター第四研修室
テーマ:情報検索資格とその活動域〜INFOSTAの情報検索試験を中心に〜
発表者:都築泉氏(元大阪工業大学)
参加者:12名

1.はじめに
 まず,「検索技術者検定」1)の概要の説明があった。この試験は,企業・大学・組織等において,研究開発や
マーケティング・企画等のビジネスで必要とされる信頼性の高い情報を入手して活用できる専門家を育成するこ
とを目的とし,一般社団法人情報科学技術協会(以下INFOSTA)2)が実施しているものである。この様な「情報
プロフェッショナル」として求められる業務は,企業・大学等の情報管理部門での情報調査の支援・利用者教育
・情報分析と提供などであり,マネジメントの能力も必要とされているがその様な技能について段階を踏んで可
視化するための試験制度であること,更に2013年までは,「情報検索基礎能力試験」および「情報検索応用
能力試験」として実施されてきたが,情報調査環境の変化に伴い,出題範囲が見直され,名称も変更となったこ
とが紹介された。

2.検索情報技術者試験3級について
 続いて,各級の試験の詳細の説明となった。まず検索技術者検定3級についてである。この試験は,一般の社
会人や情報関係の授業を履修した大学1,2年生・専門学校生・図書館員等を対象として想定して,情報検索の
基本的なスキルを評価する試験であり,以前の「情報検索基礎能力試験」を継承するものである。試験時間は1
時間であり問題の形式は選択形式あるいは○×形式である。時代の変化を反映して2014年から,以前の試験
の出題範囲から専門的なものは除外され,A・Bコースの別がなくなった。更に,準拠テキスト『情報検索の知識
と技術基礎編』3)によって合格に必要な知識が得られることが指摘された上で,試験の分野及び内容の概要・2
007年度からの出題分野の変遷・2014年度問題例が紹介された。

3.検索情報技術者試験2級について
 続いて,検索技術者検定2級の説明があった。この試験は,組織において情報検索業務に従事している人・自身
のために情報収集活動を実施している人・情報関係の大学で情報活用についての授業を履修した人を対象とした試
験である。情報検索技術に関するものとして,情報源・データベース・検索システム・具体的な検索技術・情報要
求者とのコミュニケーション能力・問題解決に関する知識などを評価する。以前の「情報検索応用能力試験2級」
を継承する試験である。前半(13:15〜14:45)と後半(15:15〜16:15)に分かれていて簡単な記述
式の設問も含む筆記式で実施される。
 試験の分野及び内容の概要・2007年度からの出題分野の変遷・2014年度問題例が紹介された上で,問題
の多くは準拠テキスト『情報検索の知識と技術応用編』4)から出題されることになっていること,実務経験がない
と難しい問題も出題されること,大学4年生で合格した例もあることが紹介された。

4.検索情報技術者試験1級について
 続いて,検索技術者検定1級についてである。この試験の対象者は2級と同様だが,実務経験5年以上を想定し
問われる知識レベルや応用力をより高いところに設定した試験である。論文試験および筆記試験による一次試験と
面接による二次試験で実施される。論文試験の課題は試験当日に示され主として受験者の考え方を問うものであり,
また面接では決められた課題に関するプレゼンテーション能力を問うほか,一次試験の内容や,情報検索関連業務
についての考え方や企画力に関する口頭試問が行われる。続いて,試験の分野及び内容の概要・2014年度問題
例が紹介され,実務経験がないと回答できない問題が出題されていることが指摘された。

5.検索情報技術者試験の関連情報
 続いて,全体像として,2007年度からの各試験の合格者数・合格率が紹介され,さらに,大学生の立場から
すると,2級取得は就職活動時にアピールできることが指摘された。
 更に,受験対策の方策として,3級・2級のためのテキストの概要が紹介された上で,情報交換・勉強の場とし
て,東京の「サーチャーの会」5)と,関西の「ISForum」(インフォスペシャリスト交流会)6)が紹介された。
 続けて,検索技術の社会的ニーズとして,学生時代,研究者,図書館司書,企業の図書室・調査部・知財部(特
許部)それぞれの立場でのニーズが紹介された上で,役に立つことの対外的アピール・専門家集団としての横の連
携が今後さらに求められることが指摘された。
 更に,大学でのこの試験に関連した教育実践として,大阪工業大学と桃山学院大学の事例が紹介された。
 また,近縁領域のイベントの例として工業所有権協力センター主催の「特許検索競技大会」7),INFOSTAの資格
試験の合格者による勉強会である「ISForum」6),ジー・サーチが事務局となっている「情報技術研究会」,INFO
STA,JST,ジーサーチが事務局となっている情報分析を学習・研究する場である「3i研究会」8)が紹介された。

参考資料
 1)一般社団法人 情報科学技術協会,「検索技術者検定試験」http://www.infosta.or.jp/examination/
  [引用日:2016―09―25]
 2)一般社団法人 情報科学技術協会,「情報科学技術協会」http://www.infosta.or.jp/ [引用日:
  2016―09―25]
 3)吉井隆明(編著),森美由紀,原田智子,時実象一(著),『情報検索の知識と技術基礎編』,一般社団
  法人 情報科学技術協会,2015年
 4)時実象一,小野寺夏生,都築泉(編著),『情報検索の知識と技術応用編』,一般社団法人 情報科学
  技術協会,2015年
 5)サーチャーの会,「サーチャーの会」http://www.searcher.gr.jp/ [引用日:2016―09―25]
 6)ISForum,「IS FORUM WEB」,http://isforum.jp/cms/ [引用日:2016―09―25]
 7)一般財団法人工業所有権協力センター,「特許検索競技大会」https://www.ipcc.or.jp/contest/[引用日
  :2016―09―25]
 8)一般社団法人 情報科学技術協会,「3i研究会」http://www.infosta.or.jp/kenkyuu/3i_HP.html[引用日
  :2016―09―25]
                                    (報告 藤間真 桃山学院大学)