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日本図書館研究会研究例会(第336回)報告


日 時:2018年3月24日(土)15:00〜17:00
会 場:日本図書館研究会事務所
テーマ:大学院の学びと高等学校の論文指導における探究モデル利用について
発表者:鈴木啓子氏(同志社大学大学院・元兵庫県立西宮今津高等学校学校司書)
参加者:13名

 大学院に入った動機と大学院で学んだこと,修士論文のテーマである高等学校の論文指導における
探究モデルの利用と学校図書館の支援を調査した結果を報告した。

1.大学院の学び
 県立高等学校の学校司書となったとき,職場で学校司書は一名だった。そのため,図書館の仕事に
ついて聞く人がおらず,自己研鑽の必要性を感じた。研修もなかったため,図書館関係の研究団体に
入った。そこで学んだのは,実践を理論化していくことだった。同志社大学に図書館情報学コースの
大学院ができたため,退職を機に理論を大学院で学びたいと思うようになったのが入学の動機であっ
た。
 図書館情報学の講義で,図書館の歴史から最新の情報や技術までさまざまなことを学ぶことができ
た。研究するときの視点,これからの図書館に求められること,実践的な企画案の作り方など,理論
と実践を結びつける学びが,重要であることを実感した。
 大学院に行くもう一つの動機は,修士論文の執筆であった。勤めていた学校は,生徒が卒業論文を
作成していたため,学校司書として関わっていた。そこで,自分自身で研究して論文を執筆すること
により,論文指導の方法がさらに理解できるのではないかと考えた。
 研究は,勤めていた学校が論文指導に探究モデルを利用していたため,論文指導における探究モデ
ルの利用についておこなった。
 論文の執筆を終えて,研究は終わりではなく,次への探究心がわいてきた。続けて研究に関心を持
ち続けたいと思った。

2.高等学校の論文指導における探究モデル利用
 探究モデルとは,探究学習をおこなうときのプロセスを示したもので,さまざまなモデルがある。
例えば,アイゼンバーグらの「Big6スキルズ・モデル」は,プロセスを「課題の定義,情報探索の方
法,情報源の場所と収集,情報の利用,まとめる,評価」の6段階としている。いくつかの探究モデ
ルの主な特徴は,情報リテラシーのカリキュラムであり,図書館の関与が前提である。身につく力と
して,情報リテラシー,学習方法を学ぶ,社会的スキル,メタ認知力,批判的思考力,創造的思考力
などがある。
 高等学校でおこなわれている論文作成のプロセスと探究モデルの利用について調査した。調査対象
は,中高一貫で6年間を見据えて,論文作成へとつなげることがやりやすいと思われる私立高等学校
にした。最初に,情報リテラシー育成の現状と論文作成実施の質問紙調査をおこなった。回答のあっ
た中から論文作成の学校に質問紙調査を実施し,36校の結果を分析した。
 36校中,探究モデルを利用しているのは10校であった。探究モデルを利用していない26校中,
図書館が関与しているのは22校,関与していないのは4校であった。
 探究モデル利用の学校は,効果として「探究のプロセスを確認しながら探究できる。プロセスのど
の段階であるか,次に何をするか分かりやすい。さまざまな資料を活用する能力,問題を整理する能
力がつく。」をあげていた。論文指導の課題は,学校全体としての体制の確立,論文指導やプロセス
の向上であった。
 探究モデル利用なしで図書館関与がある学校は,プロセスに沿った論文指導ができていた。しかし,
課題は,論文指導やプロセスの方針ができていないことであった。探究モデル利用なしで図書館関与
もない学校は,論文の形を整えることができることに成果がとどまっていた。課題は,論文指導自体
となっていた。
 この結果から,探究モデルを利用して,学校の教育目標に合わせた論文指導をおこなうことは,効
率的・効果的であると考えた。
3.質疑応答
 高等学校で卒業論文を作成しているのに驚いたという感想があった。学校で卒業論文を作成してい
る参加者からは,現状の問題点などの報告があった。探究モデルが学校であまり利用されないことに
ついては,プロセスの段階が紹介されているにとどまり,探究モデルの本などが翻訳されていず,We
bサイトも英語のため,内容について知る機会が少ないことをあげた。
                                                                     (文責:鈴木啓子)