TOP > 大会・研究会等 > 研究大会 > 2004年度 / Update: 2005.7.12

第46回(2004年度)研究大会全体報告

2005年2月20〜21日 於:新長田勤労市民センター

日本図書館研究会

第1日目 / 第2日目 / 参加者感想
開催案内(スケジュール表等)
*詳細報告は、『図書館界』57巻2号に掲載しています。

第一日目の概要

〈個人研究発表〉

「スウェーデンの図書館における利用者支援充実の背景と考察」
上野恵
(大阪教育大学附属図書館)
スウェーデンの公立,大学を問わず図書館における充実した利用者支援が,その背景として国家理念や社会の民主主義によるものであるとし,日本における図書館,図書館員の目指す方向性を提起した。
「日本における出版情報・物流情報のデジタル化の進行と図書館業務への影響」
湯浅俊彦
(旭屋書店)
70年代以降の出版情報と物流情報のデジタル化によって出版流通の合理化が進む中で,図書館界がどのように考え,対処しようとしたか不分明な状態であるが,こうした出版流通の合理化と公立図書館への影響を考察した。

〈グループ研究発表〉

「『インフォメーション・パワー』に関する一考察:02年〜04年刊行の文献レビューを中心に」
枝元益祐,柳勝文(図書館学教育研究グループ)
『インフォーメション・パワー』について2002年から2004年に刊行された文献を調査して,それら文献の特徴・傾向を明らかにするとともに『インフォーメション・パワー』検討の今後の課題を提起した。
「目録規則再構築の動向−資料区分の問題を中心として」
吉田暁史,渡邊隆弘(整理技術研究グループ)
2003年以降の目録規則の改訂動向と,IFLAによる国際目録規則への動きを概観し,現行目録規則の資料区分概念の再検討を提起した。
「『情報』科目テキストにおける『図書館』(その2)」
藤間 真(情報システム研究グループ)
高校の教科「情報」において「図書館」がどのように扱われているか,教科書出版会社と大学教職課程「情報科教育法」担当者へのアンケートを通じて「図書館」についての認識を調べ,情報教育において図書館の視点を加えることの重要性を明らかにした。
「利用者のクレームに対する取り組みについて:一検討」
中村恵信,前川和子(図書館奉仕研究グループ)
英,米,韓国の先行研究を参考とし,日本における利用者からの図書館へのクレームを検討して,今後の図書館活動への活かし方などの研究であった。
「ネットワーク環境下のセキュリティ,プライバシー,図書館サービス」
村上泰子,北克一(「マルチメディアと図書館」研究グループ)
無線タグの図書館における活用事例を概観し,セキュリティ確保と個人のプライバシー保全に関わる課題を提起するとともに,ネットワーク環境下における今後の出版界,図書館界の課題を考察した。
「図書館活動の数値からみた公立図書館の経営感覚について」
伊藤昭治,脇坂さおり(読書調査研究グループ)
『日本の図書館2003』の人口段階毎の数値を分析して,とりわけ蔵書の回転率と実質貸出密度に注目して公共図書館の経営意識を調べ比較検討した。
「戦後図書館運動の再検証」
石川敬史,篠原由美子(オーラルヒストリー研究グループ)
1950〜60年代の地域の公立図書館づくりに焦点を当てた今後の研究を進めるに当たり,上田市立図書館と平野勝重へのインタビュー調査に着手する報告であった。

第2日目の概要

*2日目のシンポジウムは、日本図書館研究会と神戸市立図書館の共催による

 「災害と図書館 ― 災害時における図書館の役割を考える ―」をテーマに4名の方の発表をもとにシンポジウムを行った。

 まず,開会挨拶を神戸市立中央図書館長の伊川一男さんからしていただいた。この中で阪神・淡路大震災での全般的な被害状況と,そこから得た教訓についてスライドを交えながらお話しをしていただき,他の4人の方のお話に付け加えてシンポジウムの討議の題材を提供していただいた。

 神戸市立北図書館の松永憲明さんからは「できたこと,できなかったこと」と題して,阪神・淡路大震災で図書館員として学んだことを発表していただいた。
 被災状況は伊川館長のお話の中で紹介されたので省き,被災直後の対応,職員の安否確認,出動状況,各施設,備品の被害状況の把握などから始まり,その後被災者に対する救援活動への動員,そして図書館の復旧活動,全国からの支援の状況を報告。まとめでは「できたこと」として,(1)市職員として災害復旧に当たったこと,(2)配本活動,キャラバン隊など独自の支援活動,(3)震災関連資料の収集,また,「できなかったこと」として (1)資料情報の提供,(2)ボランティアの活用,(3)救援図書の整理,(4)図書館再開時期の見極めなどがあり,大災害時における図書館員の苦悩が浮き彫りにされた。

 矢本町立図書館の加藤孔敬さんからは宮城県北部連続地震から学んだこととしてボランティアや図書館員による復旧活動について報告していただいた。
 宮城県北部地震によって開架室のほとんどの図書が落下するなどの被害を受けたが,ボランティアと県内図書館員の応援で早期の復旧ができた。今後は図書館の安全対策マニュアルの策定と,図書館としてできる災害への啓発などの課題を提起した。

 山田市立図書館の東野善男さんには遠賀川水系の洪水による被害と図書館の復旧について,他の自治体からの援助を含めお話いただいた。
 水害で被害を受けた飯塚市立図書館に対して,復旧ボランティアなど人的支援,図書購入など募金活動,近隣自治体の図書館が飯塚市民への図書の貸出を行うなど,地域全体で復興への支援,協力活動が活発に行われた。

 神戸大学附属図書館の渡邊隆弘さんには大学図書館として始めた震災文庫の活動について報告していただいた。
 被災地の大学図書館の責務として始めた震災文庫であるが,阪神・淡路大震災関係資料の網羅的収集,一般に広く公開,インターネットの最大限利用という3つの方針の下,10年がたった。なお続く資料収集の中で,震災文庫展示会を通じてその役割の重要性を認識するとともに,今後大学図書館として震災文庫を継続していくことや地域社会で果たす役割の重要性などについて報告された。

 全体討議では,昨年10月に起こった中越地震による被害を受けて,その復旧に関わった方々からのボランティア活動の話の中から,ボランティアをする側と受ける側のニーズとそのマッチング,そしてそれをうまく集約し,手配する仕組み作りの話が続いた。その後,こうした震災や水害など災害時に図書館が図書館としての機能をどのように発揮できるのか,何ができるのかについて意見が交わされた。

 今回の研究大会は中越地震のすぐ後ということもあり,新潟県からの参加も含めて,全国から167名の参加者があった。

 なお,大会予稿集の残部があります。ご希望の方は事務所(06―6371―8739,月・木の13時〜17時)までご連絡ください。一部500円(送料別)です。

(文責・西村一夫)


参加者の感想から

〈個人・グループ研究発表について〉

〈シンポジウムについて〉

〈運営について〉