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《座標》
『図書館界』67巻3号 (September 2015)

男女共同参画センターにおける情報機能活用の現状と課題

木下 みゆき

 国立女性教育会館では,平成25年度「女性関連施設に関する調査研究」として,「女性/男女共同参画センター(以下「センター」という。)の情報事業に関する調査」(以下「調査」という。)を実施した。調査では,資料提供の場を持つ施設が約88%と,9割に近い施設に図書室や情報コーナーがあることがわかった。また,そこでの専任職員の有無については,専任職員がいない施設が8割弱を占めており,多くの職員が施設の他業務と兼任しているのが現状である。ただ,専任職員がいる施設には,54%に司書資格を持った職員がいることも報告されている。

 これらの現状のもと,各施設では様々な工夫を施している。例えば,図書資料購入予算が少ないので,購入資料のみの収集及び提供に捉われないという発想に切り替えることができる。具体的には,相互の資料交換によって全国各地から届く情報誌や啓発冊子,チラシ等を活用した情報機能を担っている施設がたくさん存在する。

 また,兼任であることによって,資料提供の場を活かした講座や研修等の事業企画や運営を実現しやすい環境にあるといえる。この場合,レファレンスを分析することによってニーズを把握し,それを事業企画に反映するということも重要なポイントとなる。組織が小規模であるほど,円滑なコミュニケーションも取りやすい。

 調査によると,レファレンスを行っている施設は回答があった262施設の3割弱(70施設)と予想以上に少ない結果であった。また,実施している施設に件数をたずねた質問では,年間100件未満が4割を占め,1,000件を超える施設は1割にとどまっている。実際は様々な相談に対応しているにも関わらず,それらを「レファレンス」と認識していない現場も数多くあると思われる。

 国立女性教育会館が構築している「女性情報レファレンス事例集」にアップされているような,多様な情報源を駆使した専門的内容のレファレンスはセンターに寄せられる特徴ある質問の一部ではある。それと同時に,たとえば「ようやく仕事に就くことを考えはじめたのですが…」や,「この年齢で何か始めるのは遅いですよね」といった質問者のニーズがあいまいな相談の受け皿であることもセンターの大切な役割である。図書資料の提供や,専門的知識あるいは情報の提供のみがレファレンスであるという意識を払拭することからセンターならではの有効なサービスが始まる。

 このようなセンターが担っているレファレンスの内容や,それによって実現している活動及び学習支援,あるいは生き方そのものを変えるほどのエンパワメントにつながる情報機能の実際をセンターから発信することが求められているのではないだろうか。

 また,他機関との連携を行っている施設は約3割で,連携先は公立図書館が約7割と最も多く,続いて,他のセンターが約3割であった。公立図書館の利用者には,男女共同参画に特段の関心を持たない方もたくさんおられる。そこでセンターからのパッケージ貸出によって男女共同参画関連コーナー(例:DV,セクハラ,男性の育児等)を設置することは,広く市民に関連テーマへの関心を働きかける有効な方法である。また,パッケージ貸出資料に当該テーマの特集記事が掲載されたミニコミ誌やリーフレット等のいわゆる灰色文献も含めることによって,所蔵資料の多様性をPRする機会にもなる。このように基本的といえる連携であっても,積極的に取り組むことによって,それぞれの地域で男女共同参画推進の重要な役割を果たすことができるのである。

 今回の調査ではインターンシップやフィールドワークの受入は報告されているものの,アウトリーチについてはほとんど具体例がなかった。今後は,センターで利用を待ち受けるのみではなく,積極的に他分野の社会資源や教育現場等での関連事業展開を働きかけていく必要がある。それによって,センターが地域における男女共同参画社会実現の歩みを速める一役を担えるのである。いずれの場合も情報活用の要素を付加することによって,センターが提供する総体としての機能やサービス向上を実現することができると考えている。

(きのした みゆき 大阪府男女共同参画推進財団・大阪府立男女共同参画・青少年センター)