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《論文抄録》
『図書館界』70巻5号 (January, 2019)

ボストン公立図書館の利用規則と年齢制限が示す意味

川崎 良孝

 19世紀中葉に成立したボストン公立図書館は,一般民衆を対象とする健全な通俗書の提供,それに将来の社会を担うエリート層への包括的な蔵書の提供という2つの目的を持っていた。そして諸研究は前者を重視し,それがアメリカ公立図書館の基本的性格を形成したと把握してきた。本稿は1853年から1875年にいたる図書館利用規則の検討を通じて,同館の利用規則が将来の社会を担うエリート層に手厚い措置を講じていたことを明らかするとともに,利用規則自体に年齢,フィクション,階級についての同館の考えが明示的,黙示的に示され,それがまた図書館の目的に直結していることを明らかにした。

(かわさき よしたか 京都大学名誉教授)