緊急アピール(日本図書館研究会)
図書館法の館長資格要件の問題に関して

以下は1997年6月に出された緊急アピールで、文中の諸情報も当該時点のものです


6月8日に開かれた日図研理事会は、図書館法の館長資格要件の問題を検討し、文部省と地方分権推進委員会に要望書を送付すると決定しました。(文面の作成などは理事長と事務局長に一任されました。)

以下にその文面を掲げます。

文部省や地方分権推進委員会に対して葉書、ファックス、電子メールなどで、この運動にご協力ください。
また、この要望書を電子的か印刷、コピーなど媒体と手段を問わず 広く再頒布されることは、まったく自由です。一人でも多くの方々に この問題についての理解がいただけるようにご協力ください。

なお日本図書館協会では、「国の図書館政策に関する緊急対策会議」 を設けています。

問い合わせ先:
     〒154 東京都世田谷区太子堂1-1-10 
            日本図書館協会企画部
            TEL 03-3410-2965
            FAX 03-3410-6566

日本図書館協会「国の図書館政策に関する緊急対策会議」のホームページも参考にしてください。


図書館法から館長資格要件を廃止する法改正への申入れ(1997年6月20日)

1997年6月20日
文部大臣 小杉隆様

日本図書館研究会
理事長 塩見 昇拝啓

私ども図書館の整備・振興を願う研究団体として、昨今の文部省の図書館政策に対し強い危惧の念を抱いており、再考をお願いしたいと考え、この文書をお届けします。

貴省は本年度の政府予算編成に際し、これまで続けてきた公立図書館建設に対する国の補助を全廃する方針を出され、その方向で本年度予算を決定されました。財政の引き締め、「規制緩和」の大合唱に押されての措置でしょうが、その理由に、図書館を含む公立社会教育施設の整備が一定程度いきわたったことをあげておられます。しかし、町村の図書館設置がいまだ3割に過ぎないことはよくご承知のはずです。人口が少ない過疎の町村に住む人には図書館など不要だ、生涯学習は必要ない、とよもやお考えではないでしょう。私どもは、本屋さんもない過疎の町村にこそ、充実した公立図書館が必要だと考え、そのための手立てを考えてきました。国や県が充実した振興の施策をとることの必要性はますます高まっていると判断します。ハードの助成からソフトの助成へ、と 施策の転換が言われていますが、まずは施設があってこそのソフトです。いまだ図書館のない過疎の町村にこそ、しっかりした振興策にそって、手厚い補助金を交付することが、学習社会を全国土に普及するために不可欠だと考えます。これまで措置されてきた国の施策として、ほとんど唯一といってもよい施設補助金の廃止は、国の図書館行政の大幅な後退と言わざるを得ません。厳しい財政抑制の下で、腐心の結果ではありましょうが、過疎地を重点対象とした有効な補助制度の回復に一層の尽力を願いたいと要請します。

さらに、補助制度の後退に連動して公立図書館長の司書資格要件を廃止する法改正を検討されているやに伝えられているのはまことに遺憾の極みです。法が最低基準に館長の有資格を規定するのを「規制」と受け取るのは、法の趣旨をまったく曲解するものです。これは図書館が図書館として正常に成長できるための最低要件を示したものであり、せっかくの補助を無にしないための歯止めとなる条件を設定したものです。図書館設置を義務づけしていない現行法が、図書館整備の指針として掲げた重要な内容であり、これが「規制緩和」のヤリ玉にあげられることに対しては、貴省はこれまでに実施してきた自らの施策に照らして、本気で反論せねばならないはずのことです。これに従うことは、これまで文部省は補助金を餌に、館長の司書資格を強要し、自治体を「規制」してきたことを裏付けることになりましょう。決してそういうことではなかったはずでしょう。貴省が所管する図書館法の精神を正確に理解し、誠実に履行されることを強く求めます。

いまかりに図書館法から館長の資格を除くような誤った措置をとれば、そうでなくても不十分な司書の配置、処遇がさらに弱まることが危惧されます。それは貴省が長い時間をかけて検討し、昨年実施に移した司書養成教育の改善と著しく矛盾することでもあります。館長の司書資格要件をわざわざ除くといった法の改悪に強く反対し、再考を求 めます。

敬具


図書館法から館長資格要件を廃止する法改正への申入れ(1997年6月20日)

1997年6月20日
地方分権推進委員会委員長 諸井 虔様

日本図書館研究会
理事長 塩見 昇拝啓

私どもは、研究者や現場の図書館員からなる図書館(学)の全国的な学術研究団体です。貴委員会が、地方分権を推進するための提言をまとめるべく作業を継続されていることに対し、敬意と期待を寄せるものです。しかしながら、その中で、自治体が国からの補助を受ける際の要件として、図書館法が公立図書館長に司書の資格を求めていることを国による「規制」と受け止め、その削除を中間報告で提起されていることについては、強い危惧を抱いております。まして図書館法そのものの存廃をも検討の俎上に載せるというのは、およそ地方分権の推進とは関係のない暴論だと考えます。

図書館法は、条文を子細に検討すれば明らかなように、自治体の施策と住民意思を最大限に尊重する視点に立ち、およそ「規制」となるような内容をほとんど備えていない、極めて奨励的な法律であることを特徴としています。国の補助金を受ける要件に、館長が司書資格を有することを求めているのは、補助が有効に生きるための最低条件の整備を自治体に期待してのことであり、設置団体の意思を権力的に規制しているかの認識は、法による図書館設置の義務づけをとらない図書館法の精神を曲解するものというほかありません。

現に、図書館を設置する多くの自治体についてその内実を見れば、館長が司書の有資格者である場合が、そうでない場合に比べてよほど住民の期待にそった図書館サービスを達成できていることが明らかです。それは良い図書館をつくろうとする自治体自身の選択によるものであり、およそ「規制」といった性格のものではありません。図書館サービスを生み出す責任者に専門的な見識と豊富な経験を備えた有為の人材を確保する努力を払う自治体がある一方で、図書館づくりを単なるハコものづくりとしか認識せず、図書館長の重要性を理解しない自治体も残念ながらないとは言えません。そうした後者の判断をも「自主性」の尊重として認めることが、果たして真の「行財政改革」と言えるでしょうか。

地方分権を真に推進しようとするならば、地方が精一杯努力して達成している行政の成果を正しく把握し、認識することが肝要です。行政施策が住民の願いにそったものになるためには、あるべき姿に向けて一定の「規制」があるのは当然です。それは長年の、各所における実践や模索の中から創造し蓄積された鉄則であり、科学的な成果です。「規制」がすべて悪であるかのとらえ方は、まことに乱暴というほかありません。どうか、国や自治体の施策が、公正、平等、疎外の克服、有効性を確保する内容となるよう、また、現代社会が強く期待する生涯学習の体制を一層整備するために、図書館法が意図するところを正確に把握し、悔いを後に残すようなことのないよう、適性な判断をされることを強く要望します。

敬具