報告 第48回(2006年度)

第48回(2006年度)研究大会全体報告

2007年2月17~18日 於:佛教大学

日本図書館研究会

第1日目 / 第2日目 / 参加者感想
→ 開催案内(スケジュール表等)


*詳細報告は、『図書館界』59巻2号に掲載しています。

 2007年度第48回研究大会は,京都市北区の佛教大学を会場とし,全国各地からの参加者を得て,開催することができた。参加者総数は115名であった。

 今大会のシンポジウムでは,図書館界でも興味関心の高まっている「2007年問題」をテーマとした。

第一日目の概要(司会:高鍬裕樹,田村俊明)

〈個人研究発表〉

「患者図書室:患者情報室等の現状と課題」
杉本節子
(大阪市立大学大学院後期課程) 患者図書室の現状,課題及び将来の方向性を対象として取りあげたもの。「英国におけるDAISYと視覚障害者への図書館サービス」
立花明彦
(静岡県立大学短期大学部) 英国におけるDAISYを用いた図書館サービスの内容や方法を調査し,日本での今後の展開において参考となる示唆を得ようとするもの。

〈グループ研究発表〉

「インターネット予約は図書館サービスを豊かにしているか」
加藤ひろの(読書調査研究グループ) 予約に積極的に応える立場から現状と課題を検討。ネット予約導入による件数増加の考え方などについての調査結果報告。「ブックスタートを検証する:大阪の実例を中心に」
中西美季(児童・YA図書館サービス研究グループ) 絵本を媒体とした子育て支援事業とされているブックスタートは,子どもたち,保護者,図書館にとって,何をもたらしたのかを検証したもの。「オントロジと主題アクセス法」
渡邊隆弘,河手太士(整理技術研究グループ) 図書館世界の伝統的主題アクセス法と,オントロジ理論の考え方との「相似と相違」を,基礎的レベルから進めて,より明確に考察したもの。「1996年カリキュラムの問題点と今後の展開」
柳勝文(図書館学教育研究グループ) 1996年カリキュラム改訂までの経緯,その後のカリキュラムにまつわる諸問題,今後の展開等に言及したもの。「公共図書館における有料データベースの導入について」
藤間真,志保田務,西岡清統(情報システム研究グループ) アンケート調査によって導入実態が判明した。検索では初歩的知識を持つ利用者が多いが,複雑な操作や知識を身につけることは困難性があり改善が必要なこともわかった。「英国における知識情報基盤と情報プロフェッション制度」
呑海沙織(「マルチメディアと図書館」研究グループ) 次の項目による発表が行われた。知識情報基盤,知識・情報に関わる社会的基盤,英国における知識情報基盤,英国の情報プロフェッション制度。「上田市立図書館におけるPTA母親文庫創作グループ」
篠原由美子(オーラルヒストリー研究グループ)1950年代以降の上田市の図書館づくり検証調査第3弾。2005年度着手報告。2006年上田市立図書館新館建設運動の経緯を報告,今回につなぐ。


第2日目の概要(司会:渡邊隆弘,川崎千加)

シンポジウム「2007年問題と図書館の今後」

 2007年からいわゆる団塊の世代問題が始まる。図書館界でも同様であり,この問題が真剣に取り上られるようになってきた。ここには2つの問題がある。1つは大量退職に伴う問題という側面である。もう1つは図書館サービス-高齢者サービスの問題である。こうしたことを討議し,深め,実践につなぐことを目標とした。

 このため,報告者として4人の専門家からお話しいただいた。堀 薫夫氏(大阪教育大学)からは基調報告として『2007年問題と図書館の今後:高齢者への図書館サービス論から高齢者の図書館利用論・読書論へ』という報告をいただいた。

 前田章夫氏(大阪府立中之島図書館)からは,公共図書館の立場として『公共図書館における「2007年問題」』との報告をいただいた。

 早瀬 均氏(名古屋大学附属図書館)からは,大学図書館の立場として『ベビーブーム世代の退職期を迎える大学図書館のワークフォース:米国及び日本の状況』との報告をいただいた。

 また,締めくくりとして,高島涼子氏(北陸学院短期大学)から『高齢者サービスの課題』と題してご報告をいただき,フロアとの間で論議を深めた。*おことわり:前田章夫氏および早瀬均氏の所属は,いずれも発表当時のものです。


参加者の感想から

〈個人・グループ研究発表について〉

  • 現場のサービスに直結した発表が印象的でした。
  • どれも興味深いが,時代の流れ,拡がりの中で答えの見出せないもどかしさ苦しさがあった。(会員)
  • 発表者のレジュメが不十分で,一方的な発表。総花的。充分な協議時間が設けられていない。(会員)
  • 『界』と『予稿集』の要旨,『発表スライド』等の内容やタイトルが変わらないようにしてほしい。スライドは補助。
  • グループ発表ではグループの概略とテーマ説明等を予稿集に書くか口頭で説明してほしい。(会員)
  • 一般的に見てそれなりの発表であるが,その主張が明確でなく,何を言いたいのか判断に苦しむものが多い。(会員)
  • 内容の濃い発表でよかったと思います。いろいろな視点からお話しが聞けて勉強になった。「カリキュラム」のことで,一部の恵まれた人々のための資格にするのではなく司書の資質のレベルを底上げする様な方向性を見落とさないでほしい。(会員)

〈シンポジウムについて〉

  • パネリストの発表はそれぞれよかった。(会員)
  • 議論を深めるために,退職者等の数値が欲しかった。問題が多岐にわたる今回のテーマでは質問紙があってもよかったのではないか。(会員)
  • 高齢者サービスと大量退職は分けて議論してほし かった。(会員)
  • パネリストが多様な背景をもっていて良かった。
  • 時宜にあったテーマ設定で良かった。今後も継続的に取り上げてほしい。討議の焦点が定まらなかった。(会員)
  • テーマを絞ったほうが良かった。(会員)
  • 身につまされる話でした。
  • 利用者として,図書館職員経験者として考えさせられた。今後も『界』でとりあげてほしい。(会員)
  • 発表時間のコントロールをして,質問時間,休憩時間を確保してほしい。
  • テーマが大量退職と高齢者サービスに二分されていた。事前の検討は充分であったか。
  • 2つのテーマが含まれ,それを討論でつなぐことは難しい。どちらか1つでよかった。(会員)
  • 全般に新鮮でいい勉強になった。(会員)
  • わかりやすくよかった。(会員)
  • 学校は慢性的な人材問題を抱えているので特に 気にしたことはなかったが,興味深い問題提起であった。学校に有能な高齢者にきてもらうことができれば,学ぶことが多く良いのではないか。(会員)
  • 興味深く聞きました。自分のイメージと異なることもあり,おどろき,おもしろかった。老いということは自分自身のこととしても考えていかなければと思います。とても勉強になりました。(会員)

〈運営その他について〉

  • 公共図書館勤務の者としては土日設定のスケジュールより,日月の方がありがたい。(会員)
  • 会場は良かった。
  • 会場内「飲食禁止」なら徹底してほしい。(会員)
  • 全体として運営に不手際が目立った。会務報告での質疑,交流会案内,昼食休憩場所の案内,奨励賞の案内など。
  • 図書館ツアーがあってうれしかった。(会員)

〈今後,取り上げてほしいテーマなど〉

  • 研究者の机上論に終始するのではなく,実務者が主張できる内容のものを取り上げてほしい。
  • 「図書館とスポーツ」,「新自由主義と図書館の自由」,「利用者から見た図書館サービス論」,「整理技術」,「委託問題」,「情報化に伴う今後のあり方論」,「図書館員の守らねばならない倫理とは」,「図書館発展の歴史を検証する」,「図書館員のためのリカレント教育」,「図書館と政治の関わり方」など。

(文責:寒川登 大阪教育大学附属図書館)