報告 第49回(2007年度)

第49回(2007年度)研究大会全体報告

2008年2月17~18日 於:桃山学院昭和町校舎

日本図書館研究会

第1日目 / 第2日目 / 参加者感想
→ 開催案内(スケジュール表等)


*詳細報告は、『図書館界』60巻2号に掲載しています。

第49回日本図書館研究会研究大会(2007年度)は,標記の日程・会場によって開かれた。全国から計153名(前年度比33%増)が参加され,第1日目に個人研究発表とグループ研究発表,第2日目にシンポジウムを行った。シンポジウムは「現今の教育法制の改変と図書館」をテーマとした。

第一日目の概要

司会:午前:寒川登,狩野ゆき
午後:渡邊隆弘,村林麻紀

〈個人研究発表〉

1. 立花明彦(静岡県立大学短期大学部)
「英国グロスター州公共図書館における視覚障害者への図書館サービスについての考察」

 グロスターシャー公共図書館への調査をもとに,英国における地域の視覚障害者サービスは,公共図書館が行う住民への基本的図書館サービスの一環と掌握した。視覚障害者用メディアの作成等は,国家規模の基幹サービス機関RNIB(Royal National Institute of the Blind People)のトーキングブック・サービス部門や,同NLB(National Library for the Blind)などが行い,地域の公共図書館は基幹組織から受けたメディアを視覚障害者に届ける。そのゲートウエーと見定めた。以上の観察を日本の視覚障害者サービスの実情に重ね合わせ,基幹施設(サービス)の欠如の現状とその確保の必要性を訴えた。また,地域における視覚障害者サービスを,英国同様に公共図書館の日常的サービスと位置づけ,定着させるべきことを主張した。

2. 松戸宏予(筑波大学大学院図書館情報メディア研究科)
「中学生の学校図書館ニーズと学校司書に求められる支援の要素:質問紙調査を通して」

 1998年から8年間勤めた2中学校における,学校図書館に対する顕在的・潜在的ニーズを質問紙を用いて調査し,因子分析法をもって分析し,まとめた。(1)調査:生徒に学校図書館支援の有益度を尋ねた。17項目は,生徒への対応配慮,学校図書館環境,利用者教育,レファレンス対応の観点からなる。(2)分析:これによって生徒の支援有益度評価を計算し,因子分析で明らかにした。(3)結果:いずれの学校においても「学習参考書の揃え」,「マンガや軽読書の揃え」,「落ち着ける環境の工夫」に評価が高かった。生徒が学校司書に求める支援の要素を探るため,データをもとに因子分析をした。結果,学校司書に求められる支援の要素には,「視聴覚資料の整備」,「ローマ字対応表などコンピュータの利用支援」などがあることを把握した。

3.中山愛理(筑波大学大学院図書館情報メディア研究科)
「アメリカにおける巡回文庫導入とその状況-19世紀後半を中心とした各州の女性クラブ(women’s clubs)の取組みについて」

 19世紀後半から米国の公共図書館を支援し,各州の巡回文庫(traveling library)導入に働きかけた女性クラブ(women’s clubs)が,自ら巡回文庫を実施し,さらには図書館委員会に参画し,内部から図書館活動を促進したという,積極的な図書館活動者としての性格を浮き彫りにして,これに史的な評価を与えた。

〈グループ研究発表〉

1.藤間真,志保田務,平井尊士(情報システム研究グループ)
「学校現場のメディアの活用に関する図書館情報学的考察」

 学校教育上に援用されるデジタル教材と学校図書館の連携を求めて,二つの自治体の理科の授業計画に参加した図書館情報学学修者による報告である。ただし,授業へのデジタル教材導入のための情報関係知識・技術の提供に従事した。結果,本来目的とした授業,教材,学校図書館の連携については今後の追究に待つとし,予備的な研究である旨括った。

2.村上泰子,北克一(「マルチメディアと図書館」研究グループ))
「デジタル環境下におけるビジネス情報の配置と共有~大阪府下の公立図書館等を事例として(北摂編)~」

 大阪府立中之島図書館のビジネス支援のサービス内容と利用傾向をカテゴライズし,利用可能性,状況を調査して,同館のサービスが近接のビジネス街関係者に集中する事実を把握した。ゆえに,同地区外,北摂地域の調査に移り,同地域でのビジネス支援が「一般的」「短期的」なタイプに留まることを掌握した。これを「専門的」「長期的」タイプへ進展させるべく,その方途として大学図書館との連携を求めた。デジタル関係では,調査対象図書館が利用している有料データベースをあげた。

3.松井純子,河手太士(情報組織化研究グループ)
「図書館目録の将来設計:主題検索機能の提供を中心に」

 図書館目録(OPAC)の検索機能を,エンドユーザによるWeb上の情報検索を容易にしているGoogle Book Search(2004年10月~)などと比較し,その将来設計の必要性を主張した。多彩な観察であるが,図書館における情報組織化,目録(OPAC)を検索主体に転換することを見とおし,インターネット上のコンテンツをユーザ自身が任意にタグ付け検索に役立てる仕組みフォークソノミー(「folks」+「taxonomy」の合成造語)の導入をも示唆した。書誌コントロールの確立,目録規則の再編など基盤面の整備が急務だが,図書館目録の再設計,ドラスティックな改革が求められると結論した。

4.平田満子,井上靖代,脇谷邦子,日置将之(児童・YA図書館サービス研究グループ)
「文庫と公共図書館の発展の関係について-大阪の事例」

 大阪に焦点を合わせ,文庫活動の変遷とその地域性を,図書館,BMと文庫活動を軸に検討した。過去の統計書類(いずれも5年刻み)に一貫したものがないが,文庫数の増減をこれらから概観することは可能として,文庫への補助金の額,図書館数,個人貸出冊数,児童数などの増減と対比している。これらを因子関係において分析を試みた。

5.柴田正美(図書館学教育研究グループ)
「司書養成制度の諸問題と今後の展望」

 過去の図書館法・図書館法施行規則の改正と比較検討し,現時点(2007年11月段階)における図書館法改正(案)の概要を示した。特に,同法第5条1項の「大学における科目」の実定化方向を踏まえ,司書養成の「あるべき姿」を捷言した。さらに司書講習科目の並立,つまり講習科目依存タイプ=「相当司書」,大学独自タイプ=「検定司書/認定司書」(認定司書)と分けるものとする。LIPERの検定試験などを一部背景としているが,同グループ独自の主張である。

6.藤間真,家禰淳一,志保田務(図書館奉仕研究グループ)
「『図書館戦争シリーズ』の表現に関する図書館情報学的考察」

 『図書館戦争』シリーズ(有川浩著)は,図書館利用教育にも用いたいとする見解も生んでいる。小説ゆえ,現実と違う所があって当然である。だが相当の部分が事実を照射しており,それゆえ逆に異なる部分を確認しておくべきとする。こうして画された報文は,特に「図書館の自由に関する宣言」に着目している。同宣言1979年改訂の第4項目が「すべての不当な検閲に反対する」と変形されているからである。「小説」として尊重,通読し,重厚な引用をもって研究対象化しようとした。

7.池田貴儀,呑海沙織(大学図書館研究グループ)
「「感情労働」の視点から見た大学図書館業務の今日的課題」

 頭脳労働,肉体労働に続く第三の労働として1990年代から航空機の客室乗務員等の職務に関係づけられて議論されてきた感情労働について,大学図書館員の労働を当てはめて考察しようとした。まず,感情労働の何たるかを史的に把握し,Charles Bungeによる,図書館におけるストレス原因の分析的研究を軸に,欧米,オセアニアでの対公共図書館員研究をなぞった。これを大学図書館員にあてはめようとする。感情労働の従来的「相手」は利用者であるが,大学図書館においては,機関リポジトリを充実させるためには教員(研究者)に変化している。これに,新たな感情労働の把握が考えられるとする。
 「とはいえ,大学図書館における今日的課題から生じると思われる感情労働の可能性について述べるにとどまり,分析や実証はこれからの課題である。 今後は,大学図書館における感情労働及びストレスに領域を広げ,アンケート調査やインタビューなどを行いたい」と発表を結んだ。


第2日目の概要(司会:高鍬裕樹,木下みゆき)

シンポジウム「現今の教育法制の改変と図書館」

 5人のパネリストから,以下の報告をいただいた。坂田 仰(日本女子大学)「改正教育基本法と教育改革・教育法制の現在―新自由主義と新保守主義のインパクト―」井上 英之(大阪音楽大学)「どうなる社会教育法改正問題」漢那 憲治(龍谷大学)「学校教育と学校図書館とのかかわりにおいて―教師と司書教諭を中心に―」梅澤 幸平(滋賀県庁)「図書館現場から見た法改正の動き」永井 悦重(元・岡山市学校司書)「「改正」教育基本法・改定学習指導要領と学校図書館」

 その後,山本順一コーディネータの進行の下,約2時間半にわたり討議を行った。

 なお,各パネリスト,コーディネータには熱い意見(交換)をいただきましたが,事前の守備範囲の明確化等,連携・調整について,研究委員長としての私(志保田務)において万全を欠いたため,講演者,参会者の皆様にご迷惑をおかけしたことをお詫びします。


参加者の感想から

〈発表に対して〉

  • 全般的に,面白く聞くことができた。おもしろい発表が多かった。それぞれテーマが多岐にわたっており,全体研究会らしく,よい勉強と刺激になった。
  • 普段は公共図書館周辺の話題しか接することがないので,大学や学校など様々な館種について知ることができ,勉強になった。
  • いろいろな発表があり,とても勉強になった。
  • おもしろいテーマがたくさんあったが,大半の発表に研究デザインが見えず,結論が見えにくい。
  • 発表内容が「二番煎じ」的で新鮮味がない。もっと内容を吟味してほしい。
  • 発表に値するまでに練られた発表が少ない。発表すればいいというものではないと思うので,もう少し質の高い発表を望む。(複数意見)
  • 「お寒い」内容・会場だった。グループ発表のあり方について,見直す必要がある。
  • 発表内容が発表の段階に至っていないもの,グループ研究にもかかわらず内容が未成熟なものが見受けられた。発表を事前にある程度審査することが可能。グループ研究は目的を明確にし,達成できた段階(2~3年?)で発表をし,そのグループ研究を終える,という形に。(複数意見)

〈シンポジウムについて〉

  • 時宜にかなったテーマであった。
  • 法律の話がよく出てくるので,予稿集につけてもらうとよかった。
  • コーディネータをはじめ,法律関係のお話は興味深かった。
  • 一部の講師の声が大変聞きづらかった。水を用意するなりしたのか。(複数意見)
  • 講師に時間を守ってもらう工夫がほしい。警告ベルの使用も。(複数意見)
  • テーマにふさわしい講師を呼んでほしい。

〈運営について〉

  • 1日目。本数が多い。発表グループ数を限定すべき。(複数意見)
  • 本数を絞っては?質疑応答や意見交換ができる方法を考える時期に来ている。(複数意見)
  • 発表者は発表時間を守るのは大切。どうしても超過した場合は,休憩時間をうまく利用し,進行していただいたらよいのではないでしょうか。(複数意見)
  • スタッフが機敏に対応しており,よかった。
  • 桃山学院高校の見学がよかった。研究に関係のない見学は意味がない。
  • 地下鉄から近くてよかった。交通が至便でよい。
  • 会場が寒かった。(複数意見)
  • 当日配布をする場合は,障害者への配慮をして,点字版・字幕サービスを考えるべきではないでしょうか。原則として,印刷物の当日配布は受け付けないようにすべき。
  • 理事長の長話で研究発表時間に皺寄せがいった。長いなら,初めから長時間を設定せよ。
  • 当日資料が多くまぎれやすかった。予稿集が空白のグループもあった。

〈今後,取り上げてほしいテーマなど〉

  • 非正規職員増加問題
  • 利用者教育
  • 情報リテラシー教育
  • 障害者サービス
  • 学校司書の実践例など
  • 指定管理問題(指定管理者側の話も聞いてみたい)

(文責:志保田務 研究委員長)