《座標》『図書館界』48巻1号 (May 1996)


大学図書館の現状と課題

寒川 登

1986年に学術情報センターが発足して今年で10年になる。この間,国立大学図書館では着々と業務電算化が進められ,各大学を結ぶネットワークも全国にはりめぐらされた。個別大学内ではこれらを効率的に使用するためのLANの敷設が現在も計画的に進められている。この結果,今日では学術情報センターを核とし,共同分担目録を基礎とした共同利用体制が進展し,現在の大学図書舘にとって不可欠のシステムとなっている。

ここに参加している図書館では,それ以前とは業務の様相が大きく変化してきている。今や目録業務はほぼ電算化され,カード目録を作成する機会は激減している。図書館員一人あたり整理冊数は,昔は年/3000冊できればよいとか言われたのを聞いたことがあるが,電算化された今日では年/5000冊は整理できるということも言われている。相互協力はILLシステム化以前に比べれば,図書も雑誌も,平均すると,少ないところでも数倍以上の伸びになっている。業務に占める共同利用のための処理時間数が増加しているが,これによって得た便益も大きなものになっている。また,電算維持管理という新しい業務分野が定着してきている。これらの要因が大学図書館の組織や機構の変更を促している。また,電算処理に伴う要因として,従来型の業務体系や人員配置を電算処理にあうように見直しをすることが必要になってきているということも挙げられる。

資料収集面では,自館完結型の収集が財政的に不可能になっているという明白な現実認識の反映として,共同利用や他館依存を前提とした収集へとより強く変化している。既に,特色ある資料収集の追求と分担収集・保存の必要性が言われており,外国雑誌分野では「外国雑誌センター」が形成されて分担収集が行われている。その利用実績にも顕著なものがでており,こうした方式の他の分野への波及も考えられる。

また,今後はよりいっそう大学の選別化,個性化が求められることになるといわれていることから,特色をいかに持つかということが大学の生き残りをかけた命題としてさらにクローズアップされることになる。この個性化は基本的に「企業努力」が求められているところであり,大学自らが切り開かなければならないものである。

資料的には,大学の特色を生かした系統的,体系的なコレクションを形成する事によって個性化をはかり,共同利用の実績を積むことによってポイントを得る。このポイントが予算に反映され,拡大再生産されてさらに特色が生かされるような仕組みがつくられようとしている。大げさに聞こえるかも知れないが,乗り遅れれば明日はないかもしれない。

また,利用者サービスの充実が大学の選別につながるということから,日常的には学生用図書の充実をはかるという最も基本の課題がある。実はこのことが,言うは易く行うは難いことの典型かも知れないのである。自前の資料の充実をはかるため,全学的な理解と協力を得て,たゆまぬ努力をしなければならないところである。

学術情報センターは創設以来10年間で図書所蔵データは2000万件を越え,参加機関数は400を数えるに至った。データ入力は日/20000件,ILLの利用は日/2500件に達している。

今日ではこの機関の存在なくしては,少なくとも国立大学の図書館サービスは語れない所にまで到達している。ネットワークによって図書館が一体化していきつつあるという状況があるが,システム構成館としての個別館の役割がますます重要になっている。こんなことはないと思うが,なんでも借りてすますということはできない相談である。利用者の要求に応え,図書館サービスをよりいっそう発展させるためには,この部分の充実がなければ共同利用は成り立たないと考えるのが自然であろう。

自館解決をしなければならないところを明確にし,それ以外を適度に依存するという姿勢が,このシステムを活用し,長持ちさせるために必要なことではないだろうか。強すぎる依存はそれがためにシステムの非効率状況をひきおこす不安をはらんでいるように思える。

(さむかわ のぼる 大阪教育大学附属図書館)