《座標》『図書館界』49巻3号 (September 1997)


学校図書館法「改正」は一歩前進になるか

土居 陽子

第140通常国会において6月3日,「学校図書館法の一部を改正する法律」が成立,6月11日に公布された。改正の一点は,従来,「大学が行う」としていた司書教諭の講習を「その他の教育機関」でも行えるようにしたこと,もう一点は現行法の附則で,「当分の間,置かないことができる」としている司書教諭を,小規模校(11学級以下程度を想定)を除き,2003年3月までに配置するように期限をきったこと,である。

かねてより学校図書館法改正に関して,住民をはじめ学校図書館関係者のなかには,「専任・専門・正規」の職員配置を願う声が広まりつつあったが,結局今回の「法改正」は,
①充て職の司書教諭で専任の保証がない
②小規模校(全国で約47%)には依然として司書教諭が配置されない
③現職の学校司書について法的な保証がない
など,期待を大きく裏切るものとなった上,現在でも専門性の不充分な司書教諭を,より安易に速成する制度が合法化されたとして,否定的な評価をしている人も多い。
かくいう私もそのひとりである。
しかし,一方では現状打開の第一歩とする肯定的な評価があることも事実である。

いずれにせよ,この「改正」が充分なものでないことは万人の認めるところであり,それは6項目もの附帯決議がついたことでも明らかである。
附帯決議には,政府及び地方公共団体に「特段の配慮をすべき」として,
①今後中長期の学校図書館の在り方を総合的に検討すること
②小規模校への配置についても検討すること
③司書教諭の職務の在り方に関し,担当授業時間数の軽減や司書教諭の専任化を含め,検討を行い,その結果に基づいて所要の措置を講ずること
④現に勤務するいわゆる学校司書がその職を失う結果にならないよう配慮するとともに,職員配置を含めた,学校図書館整備のための地方公共団体独自の施策を,より一層充実するよう配慮すること,
などがあげられている(土居による抜粋)。
これらは,前述の住民をはじめとする学校図書館関係者の要望や意見が反映されたことは確実であり,注目に値する。更に言えば,多くの法案が充分な審議もなく通過した今国会において,学校図書館法に関しては,衆・参議院で7時間にわたる審議が行われたことは画期的であった。審議の中身も,司書教諭の業務軽減措置の工夫や学校司書の制度化,自治体独自の司書配置に対する評価,司書教諭と学校司書の役割,小規模校への対策など,現場の司書と住民団体の危惧や要望を意識した内容であり,その結果が附帯決議に盛り込まれたといえよう。

しかし,附帯決議は法的な拘束力を持たないので単なる努力目標に終わる可能性も高く,これに期待をかけるのは危険である。むしろ,この附帯決議をどう生かせるかに,学校図書館の今後の発展がかかっている。
例えば,中長期の学校図書館を総合的に検討するとして,形式ではなく,実のある検討を行うためには,具体的にどんな会をどんなメンバーで発足させるのか。小規模校への司書教諭の配置のために,具体的にはどんな施策が行われるのか。司書教諭の授業時間の軽減や専任化は実際に可能なのか。現に職にある学校司書の継続や,新たな職員配置を含めた学校図書館整備のために,政府は地方公共団体に対してどのような支援を施策として行うのか,などなど,附帯決議の中身を具体的な施策として実現させる力量が必要である。それがあってはじめて「一歩前進」といえるであろう。

しかし振り返って思うに,そんな力量がもし学校図書館現場やそれを取り巻く状況の中にあるとしたら,6項目もの附帯決議を必要とするこんな中途半端な「法改正」にはならなかったのではないだろうか。そう考えると心境は複雑である。

ともあれ,すでに公布された「法改正」を,「一歩前進」に位置づけないわけにはいかないのが現状であるが,それは今までにも増して厳しい闘いであることを覚悟しなければなるまい。

(どい ようこ:西宮市立西宮東高校)