《座標》『図書館界』50巻5号 (January 1999)


インターネット上の情報は図書館資料ではない!?

西村 一夫

秋の読書週間や図書館まつりなど,図書館のいろいろな行事が終わると,次年度へ向けて予算案の作成が始まる。私の勤める自治体もご多分に漏れず,財政危機である。予算案作成時から減額が言い渡されている。財政課との折衝でも,昨年以上の厳しさが予想され,思うような予算が確保できないのは必至である。図書館側から見たら,その活動の命といってもいい資料費も当然,削減の対象である。2月になると,多くの自治体で財政課との折衝も終わり,次年度予算が確定する。カットされた比率が多い少ないはあるが,暗い話が多く,図書館の活動も鈍りがちである。

不況になると図書館がはやるかどうかは定かではないが,極力支出を押さえたい庶民にとっては,無料で様々な資料が利用できる図書館はなんとも強い味方である。ご存知のとおり,図書館法第17条は図書館利用にあたっていかなる対価をも徴収してはならないとして,教育の機会均等と住民の学習権を保障している。
公立図書館では情報化社会に対応して,インターネットの中にホームページを設置したり,インターネットを通じて蔵書データの検索サービスやメールを使ってのレファレンスサービスを行う図書館が出てきており,使いやすい図書館を目指してサービスの拡 大に努めている。

昨年9月,生涯学習審議会は「社会の変化に対応した今後の社会教育行政のあり方について」の答申を行い,「公立図書館が高度情報化社会に応じた多様かつ高度な図書館サービスをつくっていくためには…サービスを受けるものに一定の負担を求めることが必要になる可能性も予想される」との指摘をした。これをうけて設置された図書館専門委員会では「情報化の進展に対応した図書館の新しい情報サービスの在り方」について検討した結果,昨年10月27日に「図書館の情報化の必要性とその推進方策について」の報告をまとめた。
「報告」は図書館の新しい役割として1.地域の情報拠点としての図書館,2.地域住民の情報活用能力の育成支援をその課題とし,その具体的な推進方策を4点に,また「提言」を6点にまとめている。
「報告」では,住民の情報ニーズが高まり,図書館において今後ますます情報サービスを展開する必要があるので,「このような新しい情報サービスは,これまで実施してきたサービスと別個のものとして存在するものではなく,図書館が蓄積してきた情報の組織化等に関わるノウハウ等を活かすことによって有効に実施されうるものであり,これまでの図書館サービスの延長線上に位置づけることができよう」と述べている。まさにそのとおりと思う。しかし,「提言」の(5)図書館サービスの多様化・高度化と負担の在り方の中では一転して,「図書館においてインターネットや商用オンラインデータベースといった外部の情報源ヘアクセスしてその情報を利用することは,図書館法第17条にいう『図書館資料の利用』には当たらないと考えるのが妥当である」と述べ,イ ンターネットや商用オンラインデータベースは「図書館資料」ではない,と明言している。

「図書館は様々な情報を入手することのできる情報通信ネットワークヘの地域の窓口としての役割を果たすために」一体何を提供するのかはっきりさせて欲しい。「インターネット等の通信系メディアヘの対応をも充実させる必要がある」と「報告」の中で述べていることと明らかに矛盾する。
さらに「報告」は「対価徴収については,それぞれのサービスの態様に即して,図書館の設置者である地方公共団体の自主的な裁量に委ねられるべき問題である」として,自らの判断を放棄し,実質的な有料制の導入に踏み切ったと考えざるを得ない。
図書館法第17条が公立図書館の発展に果たしてきた役割をきっちりと捉え,「なぜ図書館の利用は無料なのか」について,市民もまじえて,広く論議を進める必要がある。

図書館はいま大変な危機に直面していると言っても過言ではない。                   

(にしむら かずお 松原市立図書館)