《座標》『図書館界』52巻2号 (July 2000)


大学図書館に求められるもの

赤瀬 美穂

 五月の連休に,滋賀県から若狭へ抜ける峠道でひとりの外国人と出会った。「山の会」のリーダーが彼に話しかけると,ドイツから来て日本の大学で教鞭をとっているという。彼はリーダーが大学図書館長だと知ると「それはすばらしい」というふうに尊敬のまなざ しでリーダーを見つめ,「大学図書館長は学長職に相当する」ときっぱりと言った。彼我の「大学」の歴史的な成り立ちの違いもあるだろうが,図書館に対する認識の重みを,その言葉や態度に感じた。

 ひるがえって日本の大学図書館の現状はどうだろうか。

 日本の大学はこの10年余り,特色のある教育を模索して,授業や教育システム,組織改革などさまざまな改革を行ってきている。また,自己点検・評価も各大学で実施されてきた。
 そのようななかで,『大学ランキング』(朝日新聞社)や,在学生を対象とした「大学教育の学生認知度調査」(『カレッジマネジメント』リクルート)などが,大学外から教育サービスの評価を行うものとして公表されており,その結果は少子・高齢化時代の到来を反 映して,大学を選ぶ側の受験生や学校関係者のみならず,広く社会の関心を集めている。
 これらの調査結果は,数値や基準による客観性と,学生の回答による主観的との違いはあるが,カリキュラムの内容や教育の充実度と同じくらいに,大学時代の4年間で身につく力や学生支援の度合い,学生生活を豊かにするキャンパス環境などに多くの関心が寄せ られている。

 これらの調査項目のなかで,教育環境としての図書館の占める比重は大きい。学生一人当りの蔵書冊数や予算額,蔵書の内容の充実はもとより,開館時間や貸出,サービスの内容など,学生への支援の度合いや学生が図書館を利用しやすいかどうかが評価の対象にな っている。
 教員に比べどちらかといえばなおざりにされてきた学生へのサービスが,少子化時代の消費者重視の視点から前面に押し出され、その内実が問われている。

 また一方、経営面では受験生や学生数の減少により,資料費や人件費の削減など緊縮財政を強いられている。とくに人件費の削減による人員減と非専任職員化,外部への業務委託の導入は,どの大学でも不可避的なものとして受けとめられている。大学にとって、18 歳人口が絶対的に減少していく今後も,経費の削減や人員の縮小は避けられない課題である。

 このような状況のなかで、大学図書館は学生サービスの向上をめざして,どのような方策を採るべきだろうか。

 学生の図書館への要求は多様である。とくに日常業務のレベルでのサービス水準を高め,学生が求める資料・情報を迅速・正確に提供でき、快適な学習環境をも提供できるシステムを確立することは最優先の課題であろう。このことが、要求に応えられ信頼されるに 足る図書館あるいは職員への評価となって、学生の満足度を高めることにもつながる。そのためにはまず、限られた専門職員を効率的に配置するための業務の点検・見直しが行われなければならない。
近年の傾向では、目録業務の省力化が著しく,整理業務担当者が減少しているが,この余剰人員はそのまま人員減となるのではなく,利用者サービスに直結した業務に再配置され強化されなければならない。
 さらに,学生支援の内容として,教育(授業)と連携した図書館サービスを展開することが求められている。授業内容に沿った資料の収集や,学生のニーズを反映した利用教育の積極的な実施はその一例である。

 大学図書館はこれまで外部から点検・評価されることはあまりなかった。図書館サービスはやればやるほど利用者からの要求がさらに高まり,内容が拡大・深化することは多くの図書館職員が経験していることである。そのサービスの内容が,眼に見えるかたちで利 用者に提示され伝わるよう努めることがきわめて重要である。

(あかせ みほ 理事・京都産業大学図書館)