《座標》『図書館界』53巻1号 (May 2001)


広報と公報

柴田 正美

『図書館雑誌』の「新聞切抜帳」欄には新聞に登場した各地の図書館関係の記事が「見出し」だけであるが掲載されている。当該図書館や県立図書館・会員等が日本図書館協会に 届けたものである。
この記事を各図書館はどのように役立てているだろうか。同じ地区の図書館の動きを知るのにも,またどのような活動を展開すれば「新聞記事」になるのかを検討するのにも使え るだろう。まさか気にもしないで見過ごしていることはないと信じたい。

私の担当する司書資格取得のための必修科目である「情報・図書館学概論」を受講する学生たちは新聞記事を毎日見ることを求められる。アパート住まいで新聞を購読していない学生の中には「困る」と言い出す者もいるが,大学図書館に備え付けられている新聞があることを示唆する。そして「情報・図書館」関係の記事を切り抜き,感想文を記録して定型(B5判)用紙1枚に貼り付けて提出させる。
「情報」関係の記事は幅が広い。最初数回の間に出された記事を示し,求めているのが 「情報利用」に関することであり,ハードやソフトの開発などは対象とされないことを明らかにする。定型用紙とした理由は一定の量で感想文をまとめることの練習となるからである。感想文は,記事について考えたことを自分の言葉で表現することを求めるもので,今の学生たちが最も苦手とするものらしい。

2000年度は27回にわたって提出があり,全部で1,000件近くの記事が集まった。(複数の学生から同一の記事が提出されても1件と数えている。)提出の翌週に「記事一覧」を作成し,授業の冒頭で「気にかかる記事」,「今後とも注目してほしいテーマ」,「図書館活動として面白そうなもの」などを紹介する。併せて,感想文の一部も話す。短い時間で準備する必要に迫られ,私自身の鍛錬にもなっている。
定期試験を利用して「授業全体の感想」を書かせると,新聞を隅々まで読むようになった,同じ記事でも人によって見方・感想の違いがあることを知り自らの勉強不足を痛感した,毎日図書館のことを考えるようになった,「情報」に関する記事は非常に多いのに「図書館」関係となると滅多に出てこないのはなぜだろうか,テキストや参考書で知ることのできる図書館の姿は「古い」ということが分かった,図書館の活動は十分に知られているのでわざわざ新聞に取り上げることもなくなっているのだろうか,と皮肉な見方も時には述べられる。

数年間の「記事一覧」を見返して気づいたことがある。取り上げられる図書館が限られているということである。どの図書館でも実施している特別整理期間中の作業(曝書など)や,夏休み最後の混雑ぶりなど,複数の図書館がそれぞれの地域で取り上げられてよいはずなのに記事になっていない。必ずしも大きな図書館,有名な図書館が取り上げられるわけでもないようである。各図書館が創意工夫をこらして展開する展示会をはじめとする文化活動も,まったく記事にならないところがあるようだ。
地域版は精々1ページ。その限られたスペースの中に図書館を取り上げるか否かは,新聞社の姿勢に関わることが多い。取材した記者の腕にもよるだろう。しかし,それだけが理由だろうか。

図書館は広報活動を適切にしてきたのか疑問に思う点がある。住民に配布される公報に載せたから十分に周知できたと考えてしまっている。「公報」によるものは,あくまで税金をどのように使っているかの説明責任を果たしているだけであり,より多くの人たちに活動を知らせたことには必ずしもつながらない。公報の配布体制が地区ごとの自治会を通じているところでは,アパートを借りている学生たち(住民税を払っていないのだから「説明責任」もなく,これで良いのかもしれない。)は公報を受け取っていない。図書館から住民に知らせたつもりの情報が「知らされていない」ことになる。
新聞社への情報提供も役所にある「記者クラブ」に資料を配付するだけで済ませているところもあるようだ。個別の説明等をいやがるクラブもあると聞いているが,提供する側の熱意が伝わらないままで終わっている。
既存のメディアに対する働きかけが見直されなければならない。

(しばた まさみ:三重大学人文学部)