《座標》『図書館界』54巻3号 (September 2002)


司書教諭の発令に注視を

塩見 昇

1997年の学校図書館法改正により,長年にわたって「当分の間」猶予されてきた司書教諭配置の期限が2003年3月末と設定され,その時期が目前に迫っている。
司書教諭の配置で学校図書館はどう変わるのか,その職務は,それによって学校司書の位置づけや身分がどうなるか,両者の協同は,等々,この関連で求められて話をすることがこのところ非常に多くなっている。新教育課程の実施で大きく変わりつつある学校教育の中で,これらが学校図書館にかかわる当面の重要な関心事であることに違いないが,私がその中で必ず言及するようにしているのが,その発令を誰が,どのように行うか,についてである。

現行制度の下では,司書教諭が,現職の教諭の中で司書教諭の資格を有する者の中から発令を受けるのは周知のところであろうが,それを誰が発令するかについては,目下のところ非常にあいまいで,あまり重要視されてもいないように思われる。しかし,発令者が誰であるかによって,発令をうけた教員の学校図書館へのかかわりの程度,職務の位置づけ,職務の遂行とそのための条件整備の関係等において大きな違いが生ずるはずである。

2002年4月現在の配置状況を毎日新聞が調査し,4月23日付紙面で報じているが,全国の小中学校合わせて未だ2000名に届かず,配置対象学校数の1割程度にとどまる。来春4月一斉に,ということにならざるを得ない状況にある。今のところその発令者は教育委員会,校長に分かれているが,どちらかといえば校長発令が多いようにうかがえる。
それは法改正がなされた際の国会における文部省答弁――

「学校内の校務分掌なので」教育委員会が形式的に発令するか,委員会の委任で校長が発令するか,「いずれにしろ,学校内の校務分掌の現実というものを踏まえた対応」が必要だ。

にそっている。「校務分掌の一つとして発令」が強調されている。
従来の文部省見解は,「県費負担教職員たる教諭を司書教諭に命ずる場合の発令者は,当該市町村教育委員会である」(昭和32年5月局長通達)とあった。
司書教諭の発令を教育委員会が行うことは,学校図書館法第6条の「設置者の任務」としての行為の一環であり,当然それは「形式的に」ただ発令すればよいというものではない。少なくとも司書教諭が果たすべき仕事は何かを明示し,その職務を当該教員が果たし得るよう条件を整備する責務を伴うことになる。発令行為が校内の学校図書館及び司書教諭の職務についての共通理解を促す機会となることを自覚しての発令であることが必要である。
それをもし校長に委ねれば,校内で誰かが受け持たねばならない諸分掌を教員間でどう分担するかの一つの仕事に過ぎず,無理のない範囲でお願いします,といったレベルの校内理解の域を出るのは難しい。いわんや一教諭の分掌内容に他が口を出すことは控えねば,ということにもなりかねない。

それでは新教育課程の実施にそって,これまで不十分だった学校図書館の整備を新たな教育環境の充実として進め,「学校教育の充実に資する」学校図書館づくりに着手する,ということはおぼつかない。司書教諭を発令するということは,それだけの方針と決意をもった行政行為としてなされねばならないことである。

発令猶予期限のリミットが目前に迫る今,既に遅きのきらいもあるが,少なくとも次のような点が設置者及び国の責任として求められる。

  • 現行制度の条件(制約)を踏まえた上で,司書教諭が当面なすべき仕事を具体的に明示し,そのための理解と協力を学校現場に伝えること。
  • どういう先生が司書教諭にはふさわしいのか,司書教諭像を具体的に示すこと。
  • 司書教諭の発令を前提に,その他の「人」の体制面の違いを踏まえた学校図書館運営と図書館教育の現実的なモデル研究指定(これは本来2~3年前に着手しておくべきことであった)。
  • 発令される司書教諭を対象とした研修事業の継続した計画と具体化。

発令行為の意味とこうしたことの必要性の認識を,国及び地方委員会の所管に確かめ,迅速で適切な履行を求めることがいま急務である。

(しおみ のぼる 本会理事長・大谷女子大学)