《座標》『図書館界』55巻3号 (September 2003)


国立大学附属図書館のゆくえ
法人化の課題と現実

寒川 登

10月1日,国立大学法人法が施行される。これにより2004年4月からこれまでの国立大学は「国立大学法人」として新たなスタートを切ることになる。これは現国立大学が新制大学として発足して以来の大変革といわれている。
ここに至る間,科学技術を計画化などできない,学問を殺すもの,国立の役割は終わった,私学では当り前,法人化は当然,などなど,賛否両論が交わされた。総じて国立の側からは否定論が,それ以外のところからは肯定論がでているようである。
こうした論議のなかではあっても,現場では着々と準備が進められてきた。特に昨年夏から今年の冬にかけては中期目標中期計画の検討がおこなわれ,また,運営機構や事務組織の見直し,労働法適用や企業会計制度への変更に備えた準備もおこなわれてきた。こうしたなかで,図書館での変化がどのようにおこっているのか,いくつかの問題点を点検し今後のゆくえを見ていきたい。

・図書館の法的地位について。
国立大学法人法の施行によって国立学校設置法が廃止されることになった。附属図書館はこの設置法第六条によって設置されていたがその根拠を失うことになった。これが図書館をとりまく不安定要因の1つとなったことは否めない。それまでも,学内基盤が強いといえる部局ではなかったところは,結果的に,なお弱くなることになり,ますます問題をはらむようになる。

・図書館職員制度について。
検討されている国立大学法人等職員の統一採用試験は,国家公務員試験とは別に各地域で実施されることになる。受験区分は事務系(図書系を含む)と技術系に分かれているのみである。これまでのような図書系の試験はなく,図書館職員の制度的採用の明確な担保がなくなった。このことが後々の図書館運営や人事面でどのようなことになるのか不安定要素として見ておく必要がある。ただ,地域によっては図書系には専門試験を科すべきとの意見もあり,その方向で検討されているところもあるのが救いである。
また,この中期計画の期間中に団塊の世代のリタイヤがはじまる。ただちに影響があるようなことではないが,変革に直面しているといっていい。

・アウトソーシング。
大学の体力によって差はあると思うが,図書館を含んだ事務機構の一元化が進められている。職員採用については,人材の運用を固定化される専門的職員を避けるという傾向もある。こうした動きの背景には専門分野を含むアウトソーシングの動向とも無関係ではない。図書館は機能として保持する必要性は認めても,維持運営の方法には選択肢があるということである。図書館は手頃な部局に見られているようだ。ここでいうアウトソーシングとは職員を何名か削減し,その何名か分の人件費の75%を原資として当該業務を外注することである。ひとたび踏みだせば後戻りのできない世界になる。

・承継物品目録の作成という課題がある。
これは国から法人への引継ぎに際し,会計上の資産を確定させるために作成するものである。このために図書資料の現物チェックと取得価額の入力が必要になる。これまでにこうした資産としてのデータを持っているところは問題はないが,そうでないところは作成することを求められている。このための1点1点の現物チェックおよび価格チェック作業がどれほどのものかは想像に難くないところであろう。この作業をめぐって現場では混乱が起こっている。

・雑誌の扱いをめぐる問題がある。
図書館界では逐次刊行物はその出版形態から単行図書とは異なった扱いをしてきた。しかし,新しい会計制度では使用期間(1年以上の使用が予定されるものは備品)による区分を唯一の尺度としているため,これまでの図書館界の考え方と齟齬を来すことになっている。この基準によると現在の逐次刊行物の大半は単行本として扱うことになり,実務的に相当の作業量の増加をもたらす。これまでと内容的な変化があったわけではなく,ルールの変更によって作業量だけが増加するという理解しがたいことになりつつある。

こうした状況を見てくると,法人化が大学図書館にもたらしたものが何なのか少し見えるような気がする。もちろん未知数が多く言い切ることはむつかしいが…。法人化はチャンスと受けて立つことが必要とか,それをいやがるのは甘えではないか,とか,励ましとも揶揄ともとれる声もあるが,そう思ってプラス思考で対処するしかない。

(さむかわ のぼる 理事)