《座標》『図書館界』57巻3号 (Sept. 2005)


図書館員の『技』,そのひとつ

木下 みゆき

 「講座の申込みは“メルマガを見て”という人が増えたよ」「事業統計データベースを再構築したいのですが」…。ここ数年,私の職場である女性センターのような小さな組織の図書館員の仕事にも,IT関連業務が占める割合は確実に増えた。これらの業務を遂行することは,皮肉にも図書館員の仕事を組織の中でわかりやすくすることに大きな効果があった。
 しかし,女性センターでの10年余りの間に,IT関連業務ではなくもっとベーシックな図書館員の仕事で,「図書館員はこれが得意!」「これなら図書館員にお任せ!」と確信した一例をお示しする。

 1995年に北京で開催された世界女性会議から10年目にあたる昨年10月,ドーンセンター(大阪府立女性総合センター)で「北京JAC(Japan Accountability Caucus, Beijing)第9回全国シンポジウム『北京+10』」が開催された。その分科会の一つ,メンズセンター主催「男性運動の10年:進捗と課題」において,当分科会主催者から「女性センター図書館員の立場から見えたメンズリブ10年について話してほしい」と,パネリストとしての参加依頼があった。運営委員長の中村彰さんとは日頃から,「女性問題も男性問題も根っこは同じ」という根本的な意思疎通があり,お引き受けすることにした。
 さて,図書館員としての私ならではの視点とは…と数日迷った。その結果,「女性情報から見る男性運動」として報告し,1995年8月のNDC改訂と男性運動との関連についても述べた。

 NDC9版には,それまで367「家族問題,婦人問題,老人問題」の細かい項目になかった「367.5男性・男性論」が新たに設けられた。改訂前の項目は,婦人論,家族関係,婚姻・離婚,児童・青少年問題などで,「男性運動」や「男性問題」の資料に付ける番号はなかった。
 では,なぜ,1995年の改訂版作成時にこの番号が生まれたか。それはおそらく,日本における「男性運動」が顕在化してきたからだと考えられる。ようやく,一般社会からも「男性運動」「男性問題」が見えてきた時期といえるのではないだろうか。資料は社会の動きや運動と密接な関係があって,動きがあったからこそ資料が発行される。それを集める図書館としてはその資料をどこかにおさめなければならない。でも,これまでの分類方法ではどこにもおさまるところがない,だから新たに番号を設ける…ということになるのだろう。

 1995年はまさに関西における男性運動の拠点,「メンズセンター」設立の年。運動と情報の繋がりを具体化している現象として,図書館員の私としてはとてもわくわくする事例であった。ドーンセンターが所蔵する男性問題資料数の年度変化からも,「男性運動」の動きが読み取れることも報告した。

 この視点は,ドメスティック・バイオレンスや子ども虐待など,近年ようやく顕在化,社会問題化した事柄の分析についても同様のことがいえる。図書館で様々な資料に接していると,市民活動や運動と情報の循環性を実感するようになる。つまり,あるグループの活動によって生成された情報は,次なる別の活動の大切なヒントや題材となり,その活動によって新たな情報が生み出されるのである。この情報とは,活動が表現されたものという共通点があるのみで,形態は小冊子,チラシ,ミニコミ誌,ポスターなど多種多様である。収集資料数からのみではなく,例えばある地域で開催された講座テーマを追うことによる分析なども,その題材となる資料・情報を持っている図書館ならこそ行うことができる。
 これらを日頃から張りめぐらせているアンテナによってキャッチして収集し,すばやく提供し,後々の活動振り返りにも活用できるように組織化することは,図書館員ならではの運動,活動のサポートである。それがたとえ間接的であり即効性がなくとも,誰かが担うべきだと考えている。日々の業務の細かい一つ一つの作業が,長期スパンで見ると全てが欠かすことのできない積み重ねの要素である。

 「図書館員の仕事って,何てクリエイティブ!」というのが図書館員の仕事をライフワークにしたいと思った私の原点である。2005年11月に開館11年を迎えるドーンセンター情報ライブラリーの現場で,その思いはますます強くなっている。

(きのした みゆき 理事 ドーンセンター情報ライブラリー)