《座標》『図書館界』57巻5号 (Jan. 2006)


本筋を通したい

竹島 昭雄

 指定管理者制度の導入が相次いでいる。今年の図書館大会でも導入予定の図書館を多く聞いたし,インターネットでもその状況が報じられている。いま全国の図書館は,業務委託や指定管理者制度への移行が問われ,苦しんでいる。

 そのような時に「指定管理者制度による図書館の管理運営形態には様々な実態があることをわかってほしい」と,ある会合で主張される方があった。主張の内容は,公立図書館で勤務していた司書資格を有する臨時職員がNPO法人を立上げ,その図書館の管理運営を引き受けるという形態を紹介するものであった。

 それまでは司書資格の無い行政職員が携わり,3年ほどのローテーションで異動するという実態にあったという。このNPO法人による管理運営は,実務に携わっていた臨時職員が運営するだけに業務内容をよく知っているし,5年契約という雇用期間も保障されているから,以前に比べれば専門性が生かせるし,運営も安定したものになる。そうした実態からいえば,指定管理者制度を頭から否定せず建設的に判断してほしい,ということになろうか。

 だが,果たしてそうであろうか。確かに正規の司書職員が配属されず,カウンターも臨時職員が支えているような図書館では,指定管理者制度によって実務経験豊かな臨時職員に管理責任を与えて運営する方がよいように思われる。

 しかし,だからといって指定管理者制度導入への批判をゆるめる気にはならないし,こうした図書館の事情を考慮して「制度」の導入を柔軟に考えて行こうとは思わない。なぜなら,現状よりも良くなるというのは,ある限られた条件の下で,という但し書きがつくからである。

 確かに直営であっても予算や人員といった条件が伴う。しかし,その条件の質が違うのである。公募であれば,業者選定の最も大きな要素は金額の多寡になるであろうし,一定の年数(3~5年)が過ぎれば他の民間団体と交代するという条件も求められるであろう。だから,どんなに優れたサービスを提案しても他社より高い金額では採用されにくいし,せっかく積み上げたサービス水準もいつまで維持できるかわからないことになる。つまり,目標が持てないことになるといっても過言ではない。

 このような条件の下で行われる運営が,現場に何もたらすかは目に見えている。基準額以上にコストのかかるサービスを市民から求められても対応ができない。だから,できるだけ要望が出ないようにするか,出されても積極的に耳を傾けようとはしなくなるであろう。かわいそうなのは,そういう現場にいる専門職員である。せっかく市民の願いや要望を把握しながら,それを図書館経営に生かすことができないことになりかねない。

 さらに,批判し続けなければならない最大の理由は,図書館員の使命感を奪ってしまうことにある。なぜなら,私たちは図書館の発展を願って遠い目標を定め,今何を為すべきか判断しながらサービスを行っている。この遠い目標と今の仕事を支えているのは,「自分たちは何のために働いているか」という使命感である。指定管理者制度の導入は,この目標とともに使命感さえ奪ってしまい,発展のための根幹を失わせるものであるといってもよい。どんなに優れた目標を掲げても,それがいつか実現できるという確信がなければ,働く意欲や高い理念を持てるはずがないし,そのことは現場の一つひとつの業務に影響を与えるものである。

 それでも指定管理者制度を導入したほうがましだという声がある。そこに日本の図書館行政の貧しさをみるが,そういうことを抜きにして,安い経費でそれまでよりも質の高いサービスが実現できたと自慢する首長さえ現れている。

 このような風潮の中で,私たちができることは何か。確かなことは,それぞれの自治体で検討される「制度」導入の動きを把握し,意見を求められる機会を作り,求められれば自らのことばで図書館の本筋とビジョンを語らなけなければ,この風潮は変わらないということである。

(たけしま あきお 理事・栗東市立図書館)