《座標》『図書館界』58巻6号 (Mar. 2007)


明日に架ける橋:

IFLA大会ソウルから南アフリカ共和国ダーバンへ

志保田 務

 第72回・国際図書館連盟(IFLA)の世界大会は,メインテーマ Libraries: Dynamic Engines for Knowledge and Information Societyの下に8月20日から24日まで5日間,韓国ソウルで開催された(事前のプレセッションもあった)。世界124カ国から4000名弱,日本から228名が参加した。

 主会場は,ソウル都心の東方,地下鉄・三成(サムソン)駅の巨大な地下街(ショッピング・モール)に連結したCoex地区のCoex Intercontinental(コンベンション・ビルディング)であった。また分科会会場のうち“Off Sight”は,韓国国立中央図書館(The National Library of Korea),梨花女子大学校(Ewha Woman’s University),淑明女子大学校(Sookmyung Women’s University),国立児童・ヤングアダルト図書館(National Library of Children and Young Adult)などに設けられ,過去最大規模の8部会,47分科会において,382の発表がなされた。

 図書館見学(Library visits)では6館種,38施設から選んで参加できた。筆者は,韓国国立中央図書館,韓国図書館協会等を見学したが,建物等は日本のそれに勝るとは見えなかったものの,情報設備,インターネット接続サービス,担当者の案内ぶりには溌剌たるものがあった。点字図書館の献身ぶりも見事だった。

 ソウル大会の運営を多数のボランティアが支えた。大抵は学生であり,一部には本部員にいちいち問い合わせる案内者もいたことはいたが,多くは流暢な英語を駆使していた。筆者は旅程の見込みがつかなかったため飛び込みで参加したが,何の支障もなく手続きはスムーズに運んだ。そのことに逆に驚かされもした。

 この大会の印象を,短く記しておきたい。

 筆者は1986年,東京大会で高鷲忠美,大城善盛氏と共同発表して以来20年ぶりの参加だった。今回の盛大さに驚嘆したのは当然で,「情報化」は往時と比較すべくもない。近来のIFLA大会が“World Library and Information Congress(WLIC)”と並称されることは,全世界の図書館の情報化傾向を明示している。

 特に観察の切り口を「韓国」に置くと,同国のIT環境は日本を既に抜き去っている。さらにソウル大会の成功を基盤に,直後の2006年9月8日新図書館法を立法,10月4日に公布した。それは,図書館を巡る環境の変化への対応や(中略)知識情報社会の基盤として図書館を発展させるため」の改正であった(林昌夫「韓国図書館法公布」『図書館雑誌』100(12), 2006. 12, p. 798)。

 韓国の優位はITの域に留まるものでない。同法の第2章は「図書館政策の樹立と推進体制」を規定し,5年ごとに図書館に関する基本計画をたて,施策を進める。国・公立公共図書館長の司書職化による図書館運営体制の専門化,国家図書館制度の確立による国立図書館の機能強化」を図る。国立図書館は「知的強国」としてPride, Provision, Policy, Portalの4Pを掲げ全図書館政策の頂点に立つ(金容媛「韓国における図書館情報政策」『情報の科学と技術』57(1), 2007. 1, p. 3ほか)。

 わが国が図書館法から,公立図書館長の司書資格保有を実質要件とした第19条を削除したのは今世紀直前である。ソウル大会で日本からの司書養成,専門職制度に関する発表には「ブラックボックス」との感想が投じられた。これはわが国館界の全施策への警鐘に当たろう。

 今大会に最大の感動を与えたのは,拉致され死刑判決後大統領となった金大中氏の演説だった。彼は文化と平和の大切さを訴えた。

 2007年IFLA大会は,南アフリカ共和国ダーバンで開かれる。この国は1991年アパルトヘイトから脱し,1994年に民主国となった。建国運動ではP.サイモンの歌「明日に架ける橋」が国民を支えた。Official theme song of the WLIC 2006 Soul “Guiding our dreams”にも同趣を感じる。図書館の充実は平和に通じる。

 韓国では「情報強国」の面よりも図書館の専門性を確立,強化した,文化的prideに学んだ。

(しほた つとむ 理事 桃山学院大学)