《座標》『図書館界』59巻2号 (July 2007)


図書館でも,図書館でこそ「チャレンジ支援」

木下 みゆき

 近年,内閣府および文部科学省の男女共同参画関連政策において,「チャレンジ支援」や「キャリア形成支援」というキーワードが頻繁にクローズアップされている。いずれもライフスタイルの違いやステージを問わない,女性の就職・再就職・起業・学び・地域活動・社会参画を支援するという共通の目的を持っている。
 2005年12月には,関係府省の閣僚で構成する「女性の再チャレンジ支援策検討会議」が「女性の再チャレンジ支援プラン」をまとめた。これは,女性の意欲と能力が十分に活用できていない現状を踏まえ,子育てや介護等によりいったん離職した女性の再就職・起業等を総合的に支援し,安心して子育てしながら女性が再チャレンジできる社会の実現をめざすものである。当プランは2006年12月に改定され,(1)再チャレンジしやすい地域環境づくり (2)学習・能力開発支援 (3)再就職支援 (4)起業支援及び社会参加の促進 (5)国における総合的な情報提供・調査等の柱立てのもと,様々な支援策が盛り込まれた。

 これらを受け,各地の女性/男女共同参画センター(以下,女性センター)には「チャレンジ相談」窓口を設置するところが次第に増えてきた。ここでは,例えば,起業したいけど公的融資の受け方がわからない,子育て中だが自分の条件に合った就職先の探し方を知りたい,社会人学生としてもう一度学びたい,女性のメンタルヘルスに関わる地域活動を始めたいなど,様々なチャレンジを考えている人たちの相談を受けている。女性センターの使命は“男女共同参画政策の具現”であるから,言うまでもなくこのような動きは設置目的にかなったものである。
 ただ,女性センターの情報提供機能を充実させる立場で仕事に携わってきた者の一人として残念なのは,従来から女性センター内の図書館(情報ライブラリー,図書コーナー,図書室等)が担ってきた相談機能に言及すらされることなく,全く新規窓口として設置されていることである。「チャレンジ相談」窓口に寄せられる相談の多くは,これまでに女性センター図書館で対応してきた内容と重なるものである。

 女性センターの特徴のひとつは,各種事業プログラムの実施,ジェンダーの視点に立ったカウンセリング事業,情報提供事業という機能を併せ持った総合施設ということである。これら3つのコラボレーションによって,単独機能では果たすことのできないある段階までのワンストップサービスを担える,いわば公共施設のモデルとなり得る場である。
 日頃から女性センター図書館に寄せられる様々な相談には,まさに「チャレンジ相談」に該当するものがたくさん含まれている。それにもかかわらず,これらを十分に“可視化”できずにいるのは,私も含めて女性センター図書館員の責任でもある。「チャレンジ」や「再チャレンジ」にスポットがあたっている今,多様な情報源に目配りして情報収集し提供できる専門スタッフがいる図書館こそがこれらの相談を担うにふさわしいことを,実践と成果をもって示すチャンスととらえたい。

 現状でも,公共図書館におけるレファレンス内容に「チャレンジ相談」に分類できるものが数多いことはもちろん,昨今の「キャリア」「チャレンジ」概念の広がりを鑑みると,大学図書館や学校図書館,専門図書館におけるレファレンスにも様々な該当ケースが含まれていると考えられる。「チャレンジ支援」の看板を掲げることはなくとも,各館種が情報共有し連携することによって,より有効なサービス展開につながる可能性がある。

 大阪府では2007年4月から,府立中央図書館の全面的バックアップにより,府内全自治体の公共図書館にドーンセンター(大阪府立女性総合センター)情報ライブラリー所蔵資料を運ぶことのできる物流ルートができた。相談機能の大切さもさることながら,活動や学習を支える資料へのアクセスを保障するはたらきかけは,図書館員の基本に立ち返ると当然のことである。女性のキャリア形成,チャレンジ支援の視点で専門スタッフが収集,分析,組織化した資料を,類縁機関ネットワークによってより多くの求める方に届ける機会が拡大したことは,この上なく嬉しい。

(きのした みゆき 本会理事・大阪府立女性総合センター情報ライブラリー)