座標『図書館界』65巻1号 (May 2013)

《座標》『図書館界』65巻1号 (May 2013)


読書のゆくえ

寒川 登

 就寝前,本を読んでいる。もうながい習慣である。こうしないとなかなか寝付かれない。最近,読み方をすこし変えてみた。はやりの読書端末である。電子ペーパーと言うものを使っているとのこと,バックライトはついていないので,枕元の灯りがないとまっくらで読むことは出来ない。ま,これは本と同じである。読み始めてしばらくすると睡魔が襲ってきて寝てしまうことになるが,「コツッ」と言う軽い音と多少の衝撃で眼が覚める。紙ではこうはならないなと思いながら電源をオフにして寝る。日常の光景である。

 ところで,眼が覚めて気になったのが,読書の状況と図書館の役割はどうなっているのかと言うことである。そこで,毎年行われている「読書世論調査」を参考に,いくつか気になる状況を確認してみようと思う。手元にあるのが,第65回(2011)の報告書と第66回(2012)の一部のデータ(毎日新聞報道記事2012.10.26)であるので,およその状況ということになる。

 まず,書籍読書率(単行本,文庫・新書を読む率)は,20代51%から,青年,壮年,高年にかけてすこしずつポイントがあがり,60代57%でピークを迎える。その差6%である。地域別に見ると,書籍読書率は町村部(44%)から小都市(47%),中都市(57%),大都市(60%)へと都市規模の拡大と共に読書率(読む人の割合)が向上する傾向があることがわかる。読まない人の割合はこれと逆の関係となる。リアルな書籍を対象とする読書の場合には,読書材の入手機会・場所の条件に影響されているのだろう。

 月間の読書時間は,全年齢層平均で書籍・雑誌あわせて54分である。世代別では,10代46分から60代61分まで,その差15分である。読書冊数は月間5.8冊で,中身は単行本,新書・文庫,週刊誌,月刊誌,漫画の合計である。このうち書籍に限ると月間平均0.9冊。漫画は1.1冊で,読者年齢層別では,10代後半(73%)をピークとして反比例して暫減し70代で3%となる(以上,第65回調査)。

 月間の本(含,雑誌・漫画)の購入費は,1000円未満35%(内訳は10代46%,20代42%,30代44%),1000~2000円未満26%,3000円以上20~40代10%。一方,買わないと回答した年齢層は70代30%,60代・10代後半20%である。インターネットの利用率は,20代の80%台をピークに,年齢と反比例して順次低下し,70代で11%となる。電子書籍の読書体験は,全体では「あり」が14%,「なし」が85%である。年齢層別では10代後半の35%をピークとして順次減少し,40代20%,50代の10%未満にいたる。内容は小説(58%)と漫画(54%)が主なものである(以上,第66回調査)。ちなみに電子書籍に関わって,インターネット関連で各家庭が支出する月間の通信費は少なくとも数千円を上回ると言われているが,ここに読書に関わる内容が含まれることも考えられる。

 ここから,現代の読書状況の一端を垣間見ると,

  • 読書率は全年齢層で5割から6割のあいだにあり,高年齢層でピークを迎えるが,その差は6%と意外と大きくない。
  • 読書時間は年齢があがるにつれて顕著に増加する。
  • 地域別の傾向では都市部ほど読書率が向上する。
  • 読書冊数は5.8冊/月である。書籍のみでは0.9冊。漫画は1.1冊で,10代後半からの若い層を中心とした購読層がある。
  • 月間の書籍購入費では,10~40代の計61%の人が2000円未満/月である。買わない層は10代後半,60代,70代にあり,あわせて50%を占める,

 という状況である。

 リアルな書籍を扱ってきた図書館にとって,顕在的・潜在的な利用者である高齢者の存在は,読書の提供という図書館サービスを成立させるうえで重要である。また,リアルな書籍に対するニーズは今後ともあり続ける。一方,インターネットを使い慣れた若い年齢層を中心として,デジタルな読書需要の増大がうかがえるが,制約条件も多く,日本の図書館状況ではこうした需要に応えられるところはまだ少ない。しかし,電子的なコミックや漫画の利便性に慣れた人々がリアルな書籍に回帰することは考えにくく,これらの要素を共に満足させる解が図書館をはじめとして関係機関に求められている。

(さむかわ のぼる 本会理事)