座標『図書館界』68巻6号 (March 2017)

《座標》『図書館界』68巻6号 (March 2017)


司書養成教育と研修について

前川 和子

 司書の資格を取得したばかりの図書館員は,例えば1人の職場で縦横に働けるだろうか。複数の職員の中の新人であれば,先輩たちの中で「早く一人前にならないと!」と思いながらも,なんとか仕事をこなしていけるかも知れない。しかし,1人しかいない図書館で,やっていけるだろうか。

 学業を終え,母校の図書館に就職するチャンスを頂いた1人の新人がいた。兼任であった先輩たちに2週間にわたる職場研修を,その年同じ学園内に大学開設の図書館に配属になった新人と2人で受けた。その新人と共に,その夏の司書講習で学び資格を得て,夏休み後はいよいよ互いに1人で図書館を切り盛りすることになった。

 2,3年後,先輩に連れられて整理技術研究グループ(現資料組織化研究グループ)に参加し,その後継続し学ぶことを続けた。大学図書館の図書館業務コンピュータ化が実現できたのは,このグループで学べたおかげだった。

 大学図書館分野であれば,私立大学や短期大学協会の研修が定期的にあり,さらには日本図書館協会や本日本図書館研究会で様々に学ぶ機会がある。それらを支えにして,長く図書館員を続けることができた。図書館員を続けるためには,研修が不可欠であることは,図書館に就職した時,先輩から諄々と説かれた。大学図書館で働くためには,卒業論文を書いた経験が必要であるともいわれた。人の一生は何かと忙しいものであるが,図書館員を続けるために研修の時間をやりくりするのは必須のことである。一般に館内での研修時間の確保は難しく,館外になるが,それは簡単なものではないが,当時図書館員とはこのようなものだと思っていた。

 図書館員とはこのようなもので良かったのだろうか。もし,始めから新しい時代を可能な限り予測できる環境で,じっくりと教育を受けていたら?

 たまたま人が好き,本が好き,で仕事をしながら力を伸ばすのではなく,始めの司書養成教育の中に,情報資源(資料)の重要性を認識しその中身を徹底的に身に着け,地方自治体や教育機関の組織についての知識をもち,コミュニケーション能力も訓練されていたならば。図書館実習は,できたら必修で,期間は2週間もしくは1週間(現在最も多い)といわず,半年間から1年間であったならば…。第2次大戦後慶應義塾大学文学部に作られた日本図書館学校では,長期間の図書館実習が必修だった。なぜ,その後の多くの大学や司書講習にはそれがなくても司書養成が可能で継続されたのか。

 司書の能力は,日本国内の同じ館種であれば,どの図書館でも直ぐに使えるくらいの能力を目指す。

 学校図書館や短期大学図書館は1人の職場である場合が多い。その1人の仕事能力が求められる。最近では中規模図書館でも,1,2人の専任図書館員(そのうち1人は司書資格を持たない場合が多く)とアルバイト等という組み合わせが拡がっている。

 「図書館法」に則った現在の司書養成は「入口」の基礎教育だとされている。このままを継続してよいか。十分な力を育む司書養成教育機関は,現在の日本では一部といえる。各館種にそった養成はまだあるかないかといった状態で,図書館の仕事を十分こなせる司書の数多の出現は難しい。

 このような中であるが,各館種の図書館員としての能力を育むための科目とは何かを考えねばならない。少し前,日本図書館情報学会が積極的に取り組んだLIPERの中にも捉えられていたことを思い出す(2006年終了)。学会・教員が一丸となり,大きな成果を上げたと思う。この取り組みに,さらに各館種の図書館員の現場意識を加えることが必要ではないだろうか。司書養成の立場と現場が要求している能力の両面から捉えて,カリキュラムを作っていくことをしなければならないだろう。今般の学校図書館司書のカリキュラム構想はどうであったか。

 「入口」の教育を受けた司書が増え続ける中,各館種ごとに自立できる司書の養成を考えた時,現在不足する知識と経験とは何か。すでに資格を持ち現場で働く司書は,それが自らの研修の課題となろう。司書養成教員,図書館情報学研究者,現場で経験と知識を培った司書の連携を待ちたい。

(まえかわ かずこ 理事・前大手前大学)