座標『図書館界』71巻5号 (January 2020)

《座標》『図書館界』71巻5号 (January 2020)


司書課程教育の“見える化”

川﨑 千加

 就職活動をしている司書課程の学生から,企業の面接で司書資格が何に役立つのか,何を学んでいる
のか尋ねられて上手く答えられないと聞くことがある。大学教員からも図書館情報学がどういう分野の
学問なのか,とか,何を教えるのか,と問われたことも何度かある。司書課程は資格課程の1つとして
は存在するが,何を教えているかは具体的には見えない。大学全体の中では,専門教育科目とは関わり
がない科目は“分からない”存在である。

 2015年に司書課程主任として着任し,初めての司書課程履修希望者ガイダンスにおいて,学生達
にどのような学びをしてほしいか,司書資格を取る者としてどのような意識を持ってほしいか等を,
「本学司書課程がめざすもの」(以下,「めざすもの」)という形で示した。これは5項目からなり,
理想の司書像的な部分も大きいが,大学の教育理念も反映させたものとした。
 1.情報社会において必要な基本的ICTスキルを身につけている。
 2.情報サービス専門職として多様なメディアの特性を理解し,客観的な情報に基づく意思決定,情
   報の発信ができる。
 3.司書の仕事において求められる,対人スキルとして他者への共感性,奉仕の精神を持っている。
 4.社会的な変化に関心を持ち,多面的に物事を捉え,考えることができる。
 5.図書館が人々の知る自由を保障する社会的基盤であることを認識し,図書館の発展に寄与する。

 ここでは,司書を情報サービスの専門職として位置付けた。3と4はリベラルアーツカレッジとしての
大学の教育理念に対応する部分である。5番目は,司書資格を取る以上は司書にならなくても,それぞれ
の地域で図書館の発展を応援できる市民になってほしいという思いである。

 2016年度には上記の「めざすもの」5項目を基準として,身につけてほしいスキルや知識を1~5
段階の指標として列挙したルーブリックを作成し,ガイダンス時に配布した。ルーブリックは「学習の到
達度を測定するための評価基準表」1)である。ルーブリックは科目ごとやスキルごとなどでも作成でき
るが,まずは,司書課程全体の学びを見渡せるようなルーブリックを作成した。

 各5項目の各段階で身に着けてほしい,スキルや知識を具体的に示すことで,教員側からの成績評価で
はなく,学生が自身の到達点を自分で確認できるようになっている。また,自己評価によって司書になる
にはこうしたことが必要なのだ,という理解を促すことにもつながると思う。いわば,何を学ぶのか“分
からない”司書課程の“見える化”である。ルーブリックは非常勤講師にも配布し,本学司書課程の履修
によってめざしてほしい司書像の共有化を図ることにした。

 近年大学では学士課程教育の質保証が求められ,その取り組みの一環として,どんな学生を育てて社会
に送り出すのか,そのためにどのような教育を行うのかの目標を示し,その上でどのような学生を受け入
れるのかといった3つのポリシー(ディプロマ・ポリシー,カリキュラム・ポリシー,アドミッション・
ポリシー)を明示するようになった。各授業やカリキュラムはこうしたポリシーの具体的実践となるよう計
画され,達成状況をチェックし,プログラムの改善を行うことが求められている。そのため,各授業のシ
ラバスでも学生がこの授業によって「何ができるようになる」のか,その到達目標を示すことや,その目
標に応じた授業内容,評価の視点も示すことが求められるようになっている。

 ルーブリックは司書課程でどんな力を付けた学生を送り出しているかを大学全体や社会に説明するツー
ルとなる。ルーブリックの内容は更新されていく必要はあるが,学生自身が何を学び,何を身に着けたか
を考え,言葉にするきっかけになればと思う。

(かわさき ちか 理事・ノートルダム清心女子大学)