座標『図書館界』72巻1号 (May 2020)

《座標》『図書館界』72巻1号 (May 2020)


社会教育の元にあるもの

河西 聖子

 図書館現場から離れて4年。2年間は,教育委員会の社会教育担当として働いてきた。社会教育と図書
館は大きく言えば同じ分野であるが,情報や管轄の違いを日々感じる。図書館には「司書」,社会教育に
は「社会教育主事」,また文化財には「学芸員」という資格があるように,国や府の組織体制も違い,不
思議な距離を感じることも多い。

 さて,そんな中,社会教育や図書館関係の気になる動きを紹介する。

 ひとつは,平成30年10月,文部科学省で行われた大きな組織改編である。教育分野の筆頭局として
「総合教育政策局」が設置され,図書館分野で言えば,これまで生涯学習・社会教育課や初等中等教育局
・生徒課にあった公共図書館に関する業務,学校図書館に関する業務,子どもの読書活動推進に関する業
務が,すべて総合教育政策局・地域学習推進課の所管となった。ちなみに,司書や司書教諭,学校司書の
育成に関する業務は,総合教育政策局・教育人材政策課の所管となった。

 また,「社会教育主事講習等規程の一部を改正する省令」が公布され,令和2年4月から施行されるこ
とになった。「社会教育主事」は「社会教育士」という新たな資格に見直され,NPOや企業等の多様な主体
と連携・協働して,環境や福祉,まちづくり等の社会の多様な分野における学習活動の支援を通じて,人
づくりや地域づくりに携わる役割が期待される。平成30年12月に出された,中央教育審議会による答申
「人口減少時代の新しい地域づくりに向けた社会教育の振興方策について」でも,地域における社会教育の
意義と果たすべき役割として,“「社会教育」を基盤とした,人づくり・つながりづくり・地域づくり”と
書かれている。

 そして,令和元年6月に公布された「第9次一括法(地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進
を図るための関係法律の整備に関する法律)」により,図書館を含む社会教育機関の首長部局での所管が可
能となった。これまでも生涯学習関係の部局を首長部局へ移管する動きはあり,平成30年度の調査による
と,生涯学習・社会教育担当部課を教育委員会のみに設置している市町村は減少傾向で,首長部局のみに設
置している市町村は横ばい,教育委員会・首長部局の両方に設置している市町村は増加傾向である。

 これらの動きから,どんなことが見えてくるだろうか。

 ひとつは,社会教育全体が首長部局主導となっていることである。組織改編では「社会教育」という言葉が
課名係名から無くなった。「地域学習推進課」に読書や社会教育が含まれるわけだが,「地域」と直結するこ
とに違和感を覚える。確かに,少子高齢社会,グローバル化が進み,地域社会のつながりの希薄化が問題とさ
れる現在,「地域」は大変重要な視点ではある。しかし本来は,住民自らが主体的に学び,考え,その人らし
く生きることがあって,その上で,団体での取り組みへと発展したり,コミュニケーションが盛んになり,結
果として人づくり,地域づくりに繋がっていくのではないか。

 また,首長部局への社会教育施設の管理運営が移管されることにより,社会教育施設の政治的中立性を担保
できなくなる可能性がある。長期的な視点をもった教育を進めるための基盤として,社会教育施設が「活用」
として産業や経済的な視点へ偏らず,教育の視点で,長期的な視点で貢献できるよう,考えていかなければな
らない。

 社会教育も図書館も,住民の自主性の元に,ひいては住民の生活を豊かにするものである。私たちにできる
ことは,ひとりひとりが自由に取り組める基盤整備と,機会や場所の提供であろう。図書館で言えば,教養,
調査研究,レクリエーション等のために,必要な資料を必要な時に確かに提供することが何より基本である。
その上で,資料に出会う場所としての展示や講演などの取組,そして人と人が出会うための取組を行うことが
今求められている。

 この原稿を提出後,4月から図書館職場に戻ることになった。4年間の学びを活かして,業務に取り組んで
いきたい。

(かわにし せいこ 理事・精華町立図書館)