《座標》『図書館界』50巻6号 (March 1999)


電子図書館あれこれ

寒川 登

少しさかのぼるが,1996年に学術審議会から「大学図書館における電子図書館的機能の充実・強化について(建議)」(URL:http://wwwsoc.nacsis.ac.jp/anul/material/kengi.html)がだされた。ここで言う電子図書館とは,「電子的情報資料を収集・作成・整理・保存し,ネットワークを介して提供するとともに,外部の情報資源へのアクセスを可能とする機能をもつもの」を指す。つまり電子図書館では文字や絵,音など様々な情報をデジタル化することによって,従来型の図書館よりも,保存,有効活用,情報検索機能,発信活動などの機能を向上させるとするものである。
この「建議」を一つの契機として,「電子図書館」は大学関係の会議題,講演会や見学会など,さまざまな機会に採り上げられ,いまでは大学図書館関係,特に国立大学では程度の差はあるかもしれないが,現実的な課題として認識されている。
現在,すでに稼働している例としては,京都大学(URL:http://ddb.libnet.kulib.kyoto-u.ac.jp/minds.html),筑波大学(URL:http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/),奈良先端科学技術大学院大学(URL:http://dlw3.aist-nara.ac.jp/index-j.html),学術情報センター(URL:http://www.nacsis.ac.jp/els/els-j.html 登録必要)などが知られている。これらのところでは全文データベースや画像データベースなどを構築し提供している。

このように,これまでに多くの大学で図書館電子化のためにおこなわれてきた取り組みは,インターネット環境の整備,CD-ROMデータベースの提供,所蔵資料の書誌データの遡及入力の促進などであったが,最近ではこれに加え資料そのものを電子化,デジタル化するという事業が実施されつつある。
関連状況については「資料電子化の効率的な促進に関する調査報告」(1998.11)九州地区国立大学附属図書館電子化推進連絡会議[資料電子化の効率的な促進体制検討WG](URL:http://www.lib.u-ryukyu.ac.jp/erwg/index.html)に詳しい。
ただ,これらを見ると何をデジタル化するかということについての指針はかならずしもなく,著作権処理を伴わないという点で選ばれているようにも思える。1994年に最終報告が出された「資料の保存に関する調査研究」(国立大学図書館協議会「資料の保存に関する調査研究班」 (URL:http://wwwsoc.nacsis.ac.jp/anul/Kdtk/Rep/45/45_01.html)に集計されている保存対象資料などをそのまま電子化対象資料として見ているようである。最終報告にあがっている順位を示すと,「貴重書」,「大学独自刊行物」,「特定コレクション」「稀覯本」「郷土資料」などの資料であり,現在デジタル化されているのと重なるものが多い。

現今のインターネット環境の発展のもとでの資料のデジタル化は,利用・公開と保存を効果的に図るためというものだけではなく,紙,本等の物理的な形態・概念を乗り越え,知識を流通問題による利用・普及の制約から解放し,あらたな発展の可能性につなぐものと考えられるが,多くの機関等でこれらの事業を実現させるためにはさまざまな条件整備が必要である。通産省と国立国会図書館が取り組んだ電子図書館の調査・実験(情報処理振興事業協会「パイロット電子図書館実証実験モニタ評価報告書」97/3(URL:http://www1.cii.ipa.go.jp/el/library/new/monitor/doc6/000003.htm)によっても,そのさまざまな課題,問題点が指摘されている。何を対象とするのか,どういう方法論でおこなうのか,実施の際のコスト負担は,労力は,利用にあたって,著作権は,プライバシーはどうなるのか等々である。
電子図書館がいくつかの機関で稼働しているというレベルではなく,社会的にも普通のこととして根付くまでには相当の熟成期間を要するし,まだまだ越えなければならないハードルは多くある。
しかし,実はこの可能性をどう使いこなすかという点でもっともポイントとなるのは技術面もさることながら,社会制度を含む人的な問題であるということも指摘されているところである。

これまでに培われてきた図書館サービスを,より一層発展させるためにも,おおいに知恵をだしあうことが必要になる。

(さむかわ のぼる 大阪教育大学附属図書館)