《座標》『図書館界』55巻1号 (May 2003)


利用教育のススメ

赤瀬 美穂

5月ともなれば学校や大学の図書館では利用教育を実施している真っ最中であろう。
私が勤務する大学図書館でも,連日新入生やゼミ受講生にクラス単位でおこなっている。学生たちのパソコン操作術は数年前と較べると格段に進歩しており,OPACの検索実習でキーワードの入力ひとつにも四苦八苦していた時代がうそのようである。しかしその一方で,レポートの作成にインターネットの情報をそのまま切り貼りして引用する学生も少なからずおり,困ったものだと教員を嘆かせている。パソコンの操作には長けていても,入手した情報を比較・評価して取りこむ能力についてはまだまだ未開発という状態である。
このような現状は一例であるが,図書館の利用法だけでなく情報そのものの活用法を習得させることが図書館員の重要な役割となっている。

ところで,『大学図書館実態調査結果報告』(文部科学省)でここ5~6年の職員数の推移を見てみると,国立大学,私立大学とも専任職員の総数は年々減少し,かわりに臨時職員が増加している。整理業務担当職員が激減し,閲覧業務担当職員は総数としては増員されているが,専任と臨時職員の比率が2倍以上の差で逆転しており,この傾向はさらに進むと予想される。また,参考業務の担当者は国立大学では目に見える変化はないが,私立大学では専任・臨時職員ともわずかながら増加している。
個々の大学の職員配置の事情はさまざまであろうが,年々大幅に削減される人員のなかで,整理業務を担当する職員をぎりぎりに切り詰め,その人員を少ないながら参考業務要員として充当したことがうかがわれる。

このような厳しい人員態勢のなかで閲覧や参考業務の担当者は利用教育の実施に工夫を重ねてきたであろう。だとすれば,少人数の担当者でもより多くの受講者に大きな効果を与えられるような方策が考えられるべきである。人員的に困難だからこそ,1回の実施にかける時間が同じなら多人数に集中的におこなう,あるいは比較的余裕のある時期や,レポート作成時期など確実に参加者が集まる時期を見計らって実施するなど,柔軟な計画を立てることが必要である。

たとえば,授業と連携して新入生やゼミ受講生へクラス単位で実施した場合の効果は明らかである。高校と大学図書館の違いは大きく,また,すぐにレポート作成や定期試験の時期を迎えることから,サービス内容や文献・情報の探索法,OPAC検索法を知っているのと知らないのでは大きな差が出よう。図書館の全職員を動員してでも実現すべきことである。また,ゼミガイダンスは全員に実施できるとは限らないが,テーマに沿った文献探索ガイダンスは時宜を得たものとして学生や指導教員に歓迎されるものである。

あるいは,研究や業務に役立つ内容の教職員への利用教育を新任時期や時間的な余裕のある授業休業期などにおこなうことである。これは純粋に利用教育をおこなう部分と,利用教育計画を実現させるために日頃から実績を積み,教員との信頼関係や他部署の職員との協力関係を築き,密接な連携に向けて働きかけることを可能にするためである。

また,市販や無料公開されている既存の教材やツールを積極的に活用し,他大学の事例なども参考にして自館のプランを作成し実行してみる。ホームページを活用した個人学習の優れた事例を参考にすることもできるが,そのような情報環境にない場合でも,リーフレットの配布や,レポート作成の時期なら達人ビデオの上映と雑誌記事索引の検索実習をセットにして参加者を募ることなども可能である。

大学図書館の主要な役割は,資料や情報の収集・提供により教育・研究を支援することである。一方,利用教育についてはかつては余力があれば実施すればよいというくらいの認識であったものが,現在ではその必要性についての認識が深まり,先進的な事例も多く発表されている。

貸出やレファレンスのような資料や情報の提供サービスをしない図書館はないだろう。貸出やレファレンスと同様に,しないではすまされない利用者支援サービスとして,利用教育を図書館の重要な柱として据えるべきである。

(あかせ みほ 京都産業大学図書館)