《座標》『図書館界』56巻3号 (September 2004)


大学等における図書館学(司書課程)の今後

吉田 憲一

 近年,司書の新規採用は全国的にますます厳しい状況を迎えている。地方自治体の財政悪化に伴う業務委託や市町村合併等による正規職員採用数の減少,その代替としての臨時職員や派遣職員等の増加が著しいためであろう。現在,年間の司書採用数はどれくらいに減少しているのだろうか。

 筆者らは毎年秋,司書課程の学生達に採用状況や採用試験問題等に関するオリエンテーションを重ねてきたが,そこでの説明資料を繙いてみると近年の厳しさが伝わってくる。
 本号が刊行される9月には毎年多くの自治体で採用試験が実施されていた。例えば10年程前の1993年度には,大阪府下の統一試験日(第3日曜日)に茨木市,河内長野市,堺市,豊中市,松原市ほか多くの自治体で行われていたが,昨年のこの時期には上記のほとんどの自治体で実施されていない。一方,図書館への採用情報が得られるHPは,派遣会社や請負会社のアルバイト募集に溢れている。司書として採用される最短の道が派遣会社に勤めることでは,「市場原理の外」にあるべき図書館の本質的な役割は果たせない。
 試験問題も,外部機関への委託が増えるとともに,専門職として備えるべき素養が問われることより,増大する受験者の成績に差をつけることを主眼とするような問題も目立つ印象がある。養成側としては,専門試験実施の意義を再確認していただきたい想いがする。

 大学図書館では,国立大学法人化により今年度から国家Ⅱ種図書館学の採用試験が廃止された。それに伴い設立された国立大学法人の採用では,司書(図書館業務にのみ関わる図書系職員)は一般事務職員とは別枠で採用されることにはなったが,その採用数はきわめて少ない。全国の国立大学等を7地区に分けた近畿ブロックの募集数は,全21機関で追加募集を含めわずか5名にすぎない。今後どのように推移するのか気がかりばかりが残る。

 学校図書館では,法改正時の付帯決議に反して学校司書の存在が取り沙汰される問題をもちつつも,学校司書を数多く採用する県(鳥取県等)も出てきた。過渡期の経過的な採用に留まる面はあろうが,全国的に拡大・継続すれば新たな採用の場が開拓され,図書館活動の充実につながるだろう。

 この就職状況に関しては,日本図書館協会図書館学教育部会が,資格取得者の「就職状況調査結果」を今年度に刊行する予定である。詳細な調査データと分析結果が示されることを期待したい。

 なおこの採用者数を,大学等で同じ資格課程としてより大きな規模で置かれる教職(司書教諭資格が関連)と比較するとどうか。ひところの「冬の時代」が「大量採用」へと変わり,昨年度の採用者数は全国で久々に2万人を突破した。大台回復は1993年以来とのことである。もちろん司書課程を教職課程と比較することが適切とは言えないかもしれないが,両者での採用者数の差はあまりに大きい。司書養成としての課程のあり方は,自己点検・自己評価を待つまでもなく,今後の方向性が問われかねない状況と言っても過言ではないだろう。

 また図書館学教育に関しては,時として「実学的な分野である図書館学の教員には司書としての現場経験が欠かせない」に類する発言を耳にするが,これは担当教員の役割について一面的な見方ではなかろうか。教育・研究上からは,大学院時代の切磋琢磨する鍛錬の時期を欠く(筆者もそうであるが)ことは,研究者としての基礎的素養を行き届かなくする面もある。大学では教員に対して一般的に求められる基本要件でもある。実際,図書館界を指導する立場にある教員らの論文で,筆者はひどい中傷を受けた体験がある。調査報告にもかかわらず,調査分析の基本を誤った論文であった(『ぱっちわーく』119,p3)。専門職員認定制度の来年度実施が検討される中,養成側として教育・研究に当たる教員の側にもさらなるグレードアップが求められよう。

 最後になるが,昨年の全国図書館大会図書館学教育分科会で糸賀雅児部会長は,現在の図書館情報学教育(者)の役割として,(1)図書館司書の養成,(2)図書館情報学教育,(3)情報リテラシー教育を含む図書館利用教育,(4)現場図書館員の再教育・研修,の4つを挙げている。司書養成の制度と仕組みの再構築,図書館情報学教育の今後がいま問われている。

(よしだ けんいち 理事:天理大学)