以下に掲載の事業計画案等は、2011年5月29日開催予定の本会評議員会で審議されます。

本ページには、『図書館界』63巻1号(2011.5)掲載の日本図書館研究会決算・予算・事業計画関連文書のうち、事業計画(案)と各役員による説明・呼びかけ文を掲載しています。決算・予算表等は省略していますので『界』と合わせてご覧ください。
事業計画(案) / 理事長 / 事務局長 / 編集委員会 / 研究委員会 / ブロックセミナー担当


2011年度事業計画(案)

日本図書館研究会理事会

〈研究活動〉1.『図書館界』第63巻1~6号の編集・発行
2.第53回研究大会,図書館学セミナー,研究例会,特別研究例会の開催
3.ブロックセミナーの開催
4.上海市図書館学会との学術交流:第8回国際図書館学セミナーの開催,論文の相互掲載
〈研究の奨励と会の拡大に関わる活動〉5.障害者会員への対応
6.図書館研究奨励賞の授与
7.国際交流の推進
8.会員・研究グループの研究活動の助成
9,留学生への『図書館界』の無料頒布
10.会員および購読者の拡大
11. ホームページの維持と改良
〈その他〉12.東日本大震災被災会員への支援
13.その他本会の目的にそった事業


2011年度事業計画等の提案にあたって

理事長 川崎良孝

1

 アメリカ公立図書館を振り返ると,歴史的には子どもや黒人が利用できない時期が長く続いていました。しかし現在では,利用者の属性によって特定グループの図書館への入館自体を排除するということはもはやないとするのが,図書館界での一般的な認識でしょう。

  2004年に『読書の自由』が改訂されましたが,改訂では「市民」(citizen)という語が「個人」,「他者」などに置き換えられました。それは「市民」という語が図書館利用を制限するために用いられることを避けるためです。社会の保守化に伴い,未登録移民(undocumented immigrants)への偏狭な姿勢が強くなると,公的サービスからそうした人びとを閉め出そうとする動きが,連邦,州,地方で見受けられます。これらの動きを意識して,アメリカ図書館協会は2005年に『公立図書館へのフリー・アクセスという移民の権利を支持する決議』を採択し,2007年にも同種の決議を採択しています。両決議は,法的な地位に関わらず,個人が図書館を利用する権利を保障しなくてはならず,そうした権利を侵害する立法,措置を講じることに反対しているのです。これには国民総背番号制も関係しています。

 いま1つの例として,2008年にニューメキシコ州アルバカーキー公立図書館が子どもへの性犯罪者(sex offender)にたいして,入館を禁じた事例があります。市長の主導により子どもへの性犯罪者は公立図書館全館に入館できないとの措置を講じたのです。すなわち子どもへの性犯罪者としてアルバカーキー市,ニューメキシコ州,その他の州に登録(registered)されている人物と,図書館カード保有者を照合し,図書館カード保有者には入館できない旨を通知し,アルバカーキー市警などがこの命令を執行するという措置を実行したのでした。そして入館できないとの通知を受領した図書館利用者が,市の措置を憲法違反として裁判所に訴えました。2010年に連邦地裁は原告の主張を認めています。そののち同館は,子どもへの性犯罪者には一定の日に中央館の利用を認め,分館にはセキュリティの問題があり利用を認めないという措置を取りました。また,この問題を扱うことに図書館界はあまり積極的ではないようです。

 こうした動きは,あらためて公立図書館の原則,思想,実践を振り返る必要性を提示していると思われます。

2

 昨年の「2010年度事業計画等の提案にあたって」では,「基本的に赤字の構造になっています」と書きました。今年の決算をみますと,一般会計は全体として単年度の収支がまずまず均衡がとれていると思います。引き続き,会員全体に直接関わる部分,すなわち会費,『界』の頁数,ブロック・セミナー,大会,セミナーなどには手をつけないという方針は継続したいと思います。『界』印刷費,理事会などの費用,原稿料などの削減を昨年に行いましたが,今年はより細かな部分での見直しに手をつけたいと思います。それでも理事会としては「基本的に赤字の構造」と把握し,努力を継続します。とりわけ会員数については,本会の財政というよりも,全体としての本会の研究の力量に関わるものとして重要で,引き続き会員の皆さまには,入会の勧誘をお願いしたいと思います。

 なお3期6年にわたって本会のリーダーシップを取ってくださった西村一夫の後継として,今期は前田章夫が事務局長に就任しました。

 以下に収めた事務局長および各委員長,担当からの提案説明,抱負と事業計画,予算案などの内容をご検討いただき,5月29日開催の評議員会(本会の実質的な最高議決機関)の審議に向けて,会員の皆さんが多くのご意見,ご提言をお寄せくださるよう期待しています。お寄せいただいたご意見は当日の討議資料として活用させていただきます。

(かわさき よしたか 京都大学)


事業計画・予算案の提案説明

事務局長 前田章夫

1.2010年度決算

 2010年度決算は,会員数の減少などに伴い,厳しい状態が続いていますが,経費の削減に努めたこともあり,一般会計・特別会計ともに繰越金が若干減少していますが,収支ほぼ均衡の取れた状態になっています。

  以下,予算と大きく違っている項目を中心に説明します。
一般会計の「収入」では,「会費」が予算よりも12万円多くなっています。個人会員の会費収入は予算にとどきませんでしたが,団体会員の会費納入が予算より約20件多かったことによります。『図書館界』の売上げは予算額を下回りました。また広告料も予算より10万円少なくなりました。引き続き努力をしたいと思います。一方,「支出」に関しては,「交通費」「研究助成費」ともに予算額を大きく下回りました。「研究助成費」については,ブロックセミナーの開催にあたり,地元で会場費等の経費の節減に努めていただいた結果です。「国際交流費」は特段の事業がなかったことにより,未執行となっています。「雑誌刊行費」は『図書館界』の増ページにより予算を超えました。
 特別会計については,『図書館資料の目録と分類』は150万の予算に対して146万と少し下回りましたが,増訂第4版になり好調に売り上げを継続しています。ただ,『本をどう選ぶか』『公共図書館の役割を考える』『新・大学生と図書館』『子どもの読書環境と図書館』はいずれも低調でした。『図書館の発展を求めて』は販売委託先からの入金があり10万円ほど予算を上回りました。なお,『構造的転換期にある図書館』については刊行時期が遅く,まだ売上額には反映されていませんが,順調に伸びています。支出については『図書館資料の目録と分類』『図書館・図書館学の発展』を作製しましたので,「印刷費」が57.9万円予算を上回りました。しかし,他の項目は定額の「事務局費」を除き予算を下回りました。全体として繰越は昨年より20万円ほど少なくなりましたが,ほぼ均衡の取れた収支になりました。
 第2特別会計,いわゆる「図書館研究奨励賞基金」は,奨励賞副賞10万円を執行しましたが,収入で長期定期預金の利子が50万円弱あり,次年度への繰越額が1,160万円と増えました。

 このように財政面では一般会計が年々厳しい状況になっています。例年のことですが,個人会員数を減らさないことと,団体会員の継続が大事だと考えています。個人会員,団体会員の入会に向けて,会員の皆さんのご協力を,あらためてお願いしたいと思います。

2.2011年度事業計画案

 ここに提案する事業計画・予算案の審議と承認は評議員会(5月29日開催)の役割ですが,会員の皆さんの声を反映させたいと思いますので,電子メール(アドレス:nittoken@ray.ocn.ne.jp)等で事前に事務局まで,ぜひご意見をお寄せください。

 「研究活動」では,『図書館界』の年6回刊行,研究大会,図書館学セミナー,ブロックセミナー,研究例会があります。ブロックセミナーは全国各地域で開催することを目指しております。昨年度は福島県と沖縄県で実施しました。今年度も2ヶ所程度は開催可能ですので,評議員,会員のみなさまのお申し出をお待ちしています。なお,今年度は第8回国際図書館学セミナーが11月に日本で開催されるため,図書館学セミナーは行われません。「研究の奨励と会の拡大に関わる活動」では,「留学生への『図書館界』の無料頒布」が11年目に入ります。これは,図書館研究の奨励と国際交流の一環として,日本で図書館情報学を学ぶ留学生に,1年間を単位にして『図書館界』を寄贈し,図書館研究や図書館の理解に役立ててもらうという趣旨です。詳しくは60ページを参照して下さい。

3.2011年度予算案

 一般会計予算案については,会則改正に伴う学生会員の新設に伴い会費収入を昨年に比べ減額計上しました。もちろん新規の入会を増やすことと継続して会に参加していただくことにより,昨年並みの収入を目指しています。広告料につきましても実態に合わせて35万円減額しましたが,これについても新たな広告元の獲得に向けて努力します。
 支出については,研究活動の停滞を引き起こさないよう配慮しながら,昨年度の実績を基に,できるだけ節約できるものを再検討して計上しています。「研究助成費」については,国際図書館学セミナー開催により,図書館学セミナーが開催されないため減額しています。「会合費」「事務局費」については,前年度実績に合わせて若干増額しました。

 「特別会計」の収入の方では,『図書館資料の目録と分類』を昨年と同様に150万円としました。また,『構造的転換期にある図書館』についても若干増額し75万円としました。昨年度刊行した『図書館・図書館学の発展』が新たに加わり,110万円の売り上げを見込んでいます。また,『図書館の発展を求めて』は昨年並みの60万円を計上しています。
 一方,支出の方では,第8回国際図書館学セミナーの開催等の「上海図書館学会との交流費」を30万円計上しています。

4.事務局との連絡など

 財政を支えるのは会員皆様の力です。引き続き会費の前納,会員拡大,資料販売等に皆様のいっそうのご協力と積極的なご発言をお願いいたします。
 なお,事務局は毎週月・木曜日,午後1~5時に事務局員が常駐しておりますので,連絡はその時間帯にお願いします。ただし緊急の場合以外はなるべく文書,ファックス,電子メールでご連絡ください。

(まえだ あきお)


『図書館界』の充実のために

編集委員長 渡邊隆弘

 『図書館界』編集委員長という大任を拝命しました。能力も経験も十分ではなく,行き届かないと思いますが,新体制の編集委員会で,会員のみなさまのお力をお借りしながら,伝統ある『界』を引き継いでいきたいと考えています。

 以下,本年度の計画等を申し述べます。

(1)《論文》と《現場からの提言》

 『界』の核となるのは,やはり会員の皆さんからの投稿論文です。学術的な《論文》の枠のほかに,57巻(2005年)からは《現場からの提言》の枠を設け,二本立てで運営しています。2010年度の62巻では10本の《論文》を掲載しましたが,引き続き会員のみなさまの積極的なご投稿を期待します。
 いまさらながら本会は,アカデミックな学術活動と図書館現場から生まれる理論や実践とを,ともに重視してきました。そうした観点からみると,図書館現場の実務者からの投稿が減っていることが気にかかっています。62巻では,実務者の方による《論文》は少しありますが,《現場からの提言》は一本も掲載できていません。図書館現場の厳しい状況等が背景にあろうかと思いますが,現場の視点から状況や理論と斬り結ぶことにぜひチャレンジいただければと思います。

(2)特集企画「図書館実践(サービス)の最前線」(仮題)

 「構造的転換期にある図書館の法制度と政策」(60巻)以来となる連載企画を,今秋から来年度にかけて行っていきます。『界』では「構造的転換期」までいくつかの特集企画を組んできましたが,大きな物語や理論的問題を議論するというタイプのテーマが多かったと思います。そうしたことももちろん必要ですが,今回は図書館の「現場」に焦点をあて,豊かな実践を掘り起こすことで足元から図書館を考え直すことを目指します。ご期待ください。

(3)《書評》と《新刊紹介》

 近年《書評》《新刊紹介》に力を入れていますが,特に62巻では13本ずつ計26本を掲載しました。過去最大の本数であったかもしれません。今年度も積極的に掲載していきたいと考えています。書評・新刊紹介の依頼にあたっては(投稿も可能です),若手の書き手,多様な書き手の発掘も意識していきます。 近年《書評》《新刊紹介》に力を入れていますが,特に62巻では13本ずつ計26本を掲載しました。過去最大の本数であったかもしれません。今年度も積極的に掲載していきたいと考えています。書評・新刊紹介の依頼にあたっては(投稿も可能です),若手の書き手,多様な書き手の発掘も意識していきます。

(4)シリーズ「新中国図書館の60年」

 本会と上海市図書館学会との国際交流協定では,両会の機関誌の論文等を相互に翻訳掲載できるという規定があります。これまでも上海市図書館学会『図書館雑誌』の記事を随時『界』に翻訳してきましたが,63巻ではシリーズとして集中掲載します。中華人民共和国建国60年(2009年)を記念して図書館に関わる各分野の「60年」を振り返る『図書館雑誌』連載企画から,日本の読者にも興味深いと思われるテーマを選んだものです。

(5)その他

 例年通り,研究大会,図書館学セミナーの特集も掲載の予定です。
 既報の通り,昨年度からCiNii(国立情報学研究所)を通じた『界』の電子化を実施し,特に刊行後2年経過分はオープンアクセスとしました。より広い読者が期待されます。今後とも内容の充実に努めてまいりたいと思いますので,よろしくご協力ください。

(わたなべ たかひろ 帝塚山学院大学)


震災を支えうるような研究を

研究委員長 志保田務

 未曾有の大震災。被災された方,地域の方々,関係者,殊に会員の皆様に深甚のお見舞いを申しあげます。被災の皆様を支える支援が,図書館・情報学の研究活動においても重大課題と痛感しています。
 兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)1年後の1996年2月研究大会で「震災から一年」を兵庫県のじぎく会館で開き,この年末,同じ神戸市で国際的な「日図研50周年記念大会・研究大会」を開催しました。本年度の研究計画に大きな指針となるでありましょう。

 研究委員会は,下記の事業を例年行います。

(1)研究大会・図書館学セミナー

 旧年度はともに,電子化,「電子書籍元年」に照準の一つをおきました。下記のとおりです。

1.1 研究大会

 52回大会を去る2月に開催。会場大学のご高配で170名と多数参加者を得ることができました。ご指摘が続いた発表行動の整備にも向上面がありました。
 本年度は2012年2月下旬に兵庫県で開催予定です。個人発表(二人組みも可。当研究会員に限定)の応募要領は本誌63巻3号(9月)に掲示予定。二組程度ですが奮ってご応募下さい。研究グループへは9月中に大会発表意志等をお尋ねします。発表内容・文章・発表者(2名まで。当該グループ形成会員に限定)を早期に確定して下さい。近年,発表申込や送稿の遅滞,資料の不整備・膨大化など不首尾が見られます。2日目はシンポジウムです。本年は大震災が中心となるでしょう。本巻4号(11月号)予告,5号にご案内します。ご協力お願いします。

1.2 図書館学セミナー

 神戸女子大学教育センター(三宮)のご高配で昨年は11月21日に開催。本号に記録掲載しています。関係事項に練達の図書館学研究者,電子書籍先駆者を中心にNDL,JLAから新鮮な報告等を得ました。ただし本年度は「国際図書館学セミナーが国内開催の場合不開催」という年に当たり,お休みです。
 次年度迄の開催地(3地域巡回)は次の予定です。

2011年度2012年度
研究大会兵庫京都等
セミナー非開催京都等
(重複避け,大阪へ?)

   研究大会・セミナーの会場(費)に窮しています。会員のご所属大学等の無料ご提供を願いあげます

1.3 国際図書館学セミナー

 研究委員会とは別の独立組織ですが,本年度は3年に1度の日本開催年。できる限り協力の予定です。

1.4 ブロックセミナー

 これも別組織で,本欄でも当該担当から案内していますが,本委員会としては連携を望んでいます。

(2) グループ研究と助成

 研究大会等で発表することを条件に7名以上の会員で形成するグループに対し原則年3万円を助成しています。増額申請を含め本委員会で審査し理事会の承認を得て2年間の助成をします。この度の受付は終了し,10研究(主題),2(地区)のグループから受理しました。ただ財政不良。次回は対増額申請の再検討が必至です。ご協力を切にお願いします。

(3)研究例会・特別研究例会

3.1 研究例会

 日常的な研究発表の場です。本年度は10回開催し,本誌に案内,報告します。なお助成研究グループは大会か研究例会で発表しなければなりません。

3.2 特別研究例会

 本年は5月29日(日),午前,松岡要JLA事務局長が,図書館の公契約制度を軸に司書の専門職制度関係で論じます。本号p.67の案内をご覧下さい。

(4)大震災研究の把握と研究活動の推進

 研究会の本拠に近い阪神・淡路大震災の研究,記録を基盤に,今般の東日本大震災を支えうるような研究開発,その把握,発表等を展開する所存です。
 危機で辞意容れられませんでした。ご寛恕下さい。
 6理事,複数評議員,練達の委員で委員会を構成。数名を増強。事項別,対研究グループ別に担当者を明示したうえ重要任務に邁進します。ご協力下さい。

(しほた つとむ 桃山学院大学)


ブロックセミナーの企画をお待ちしています

ブロックセミナー担当 竹島昭雄、高木享子

 ブロックセミナーは,各ブロックの会員からの申し出によって開催されます。申し出のあった会員の意向(開催地・テーマ・講師など)は最大限に尊重します。また,経費は原則として全額を日本図書館研究会が負担します。

 本会の諸研究活動は,京阪神を中心に開催される場合がほとんどであるため,ブロックセミナーは会員の最も身近なセミナーとなります。
 みなさんからの積極的な企画をお待ちしています。なお,連絡先は下記のとおりです。(→ 連絡先等)。

(たけしま あきお 京都精華大学)
(たかぎ きょうこ)


過去の事業計画等