以下に掲載の事業計画案等は、2013年6月2日開催の本会評議員会で承認されました。

本ページには、『図書館界』65巻1号(2013.5)掲載の日本図書館研究会決算・予算・事業計画関連文書のうち、事業計画(案)と各役員による説明・呼びかけ文を掲載しています。決算・予算表等は省略していますので『界』と合わせてご覧ください。
事業計画(案) / 理事長 / 事務局長 / 編集委員会 / 研究委員会 / ブロックセミナー担当


2013年度事業計画(案)

日本図書館研究会理事会

〈研究活動〉1.『図書館界』第65巻1~6号の編集・発行
2.第55回研究大会,図書館学セミナー,研究例会,特別研究例会の開催
3.ブロックセミナーの開催
4.上海市図書館学会との学術交流,論文の相互掲載
5.図書館・図書館学関係図書の出版
〈研究の奨励と会の拡大に関わる活動〉6.障害者会員への対応
7.図書館研究奨励賞の授与
8.国際交流の推進
9.会員・研究グループの研究活動への助成
10.留学生への『図書館界』の無料頒布
11.会員および購読者の拡大
12.ホームページの維持と改良
〈その他〉13.その他本会の目的にそった事業


2013年度事業計画等の提案にあたって

理事長 川崎良孝

1

 3月の研究大会のテーマ「ネットワーク時代の図書館とプライバシー」は時機を得た内容だったと思います。アメリカを例にとると,1970年代以降,図書館記録の秘密性や利用者のプライヴァシーを「絶対に」保護しなくてはならず,それが利用者の信頼を得る前提になると考えてきました。この状態が根本的に変化したのが9.11の直後に採択された合衆国愛国者法で,連邦捜査局はテロにまつわる捜査で,図書館での個人識別情報をほぼ無制限に獲得できるようになりました。さらにWeb2.0の環境下で,企業はいっそう消費者の個人情報を集めて,企業活動に活用しようとしてきました。さらに,ソーシャル・ネットワーキングなどを用いて,個人が自分のプライヴァシーを公開するという方向がでてきました。これに関連してD. Holtzman(Privacy Lost, 2006)やJ. Palfrey(Born Digital, 2008)は,1980年代以降に生まれたネット世代と戦後のベビーブーマーでは,プライヴァシーへの意識が大きく異なると指摘しています。
 こうした状況を意識して,2007年にOCLCは『ネットワーク世界での共有・プライヴァシー・信頼』(Sharing, Privacy and Trust in Our Networked World)を発表しました。この調査には日本を含めて6か国6千名以上が回答しました。調査結果を踏まえて,図書館とプライヴァシーで有名なS. Houghton‐Jan(ヒュートン-ジャン)は次のように書いています(p.6-10)。

 人びとは何らかのサービスが見返りに得られるなら,一定のプライヴァシーを諦めてもよいと考えるようになってきた。私の図書館の目録には「私の読書履歴」という部分がある。「履歴」を望まない人はほとんどいない。「あなたが除去しない限り永久保存され,法執行機関が求めれば,図書館は提供しなくてはならない」といっても,「気にしない。悪事を行っていない」という。図書館員は依然としてプライヴァシーを気に掛けているようだが,だれも気にしてはいない。

 歴史,哲学,それに技術にも堪能な図書館員N. Morinは次のように指摘しています(同書p.6-10)。

 驚くことに,人びとは率先してインターネットに私的情報を提供する。Googleなどからの圧力よりも,人びと自身がよりよいサービスとの引き替えに,プライヴァシーへの期待を低めている。図書館はこの動きを考慮すべきで,図書館はプライヴァシーに関する強力な方針を固守するとともに,よりよいサービスを提供するために,利用者の個人的情報を求めたり活用したりすることに,これまでのように躊躇してはならない。

 Morinは「強力な方針を固守する」必要性を確認しました。これは伝統的な図書館の原則を再確認したことになります。それに続けて,よりよいサービスを提供するために,「利用者の個人的情報を求めたり活用したりすることに,これまでのように躊躇してはならない」と結論しました。この2つの言を実際にどのように調整しつつ,よりすぐれた図書館サービスを展開していくのか,これが現在の課題です。

2

 2012年度決算をみると,一般会計は,全体としてまずまず単年度の収支均衡がとれています。しかし同時に,理事会としては基本的に赤字の構造と把握し,努力を継続したいと思います。引き続き,会員全体に直接関わる部分,すなわち会費,『界』の頁数,ブロックセミナー,研究大会,図書館学セミナーなどには手をつけないという方針は継続します。これまでに『界』印刷費,理事会などの費用,原稿料などの削減を行ってきましたが,今後も経費削減に努めたいと思います。一方では,これまで数十年にわたって定型化されてきた方式を検討する余地もあると考えています。とりわけ会員数については,本会の財政というよりも,むしろ全体としての本会の研究の力量に関わるものとして重要で,引き続き会員の皆さまには,入会の勧誘をお願いしたいと思います。

 今期の理事の役割分担では,会の事業推進の要となる編集委員長,研究委員長が大幅に若返りました。『界』の内容,特集,誌面構成,大会やセミナーの内容や運営に,魅力的な提案が委員会から出されることを期待しています。

 以下に収めた事務局長および各委員長,担当からの提案説明,抱負と事業計画,予算案などの内容をご検討いただき,6月2日開催の評議員会(本会の実質的な最高議決機関)の審議に向けて,会員の皆さんが多くのご意見,ご提言をお寄せくださるよう期待しています。お寄せいただいたご意見は当日の討議資料として活用させていただきます。

(かわさき よしたか 京都大学)


事業計画・予算案の提案説明

事務局長 前田章夫

1.2012年度決算

 2012年度決算は,会員数の減少などに伴い,厳しい状態が続いていますが,経費の節減に努めたこともあり,一般会計はほとんどの費目で予算を下回りました。特別会計についても収支はほぼ均衡の取れた状態を保っています。

 以下,予算と大きく違っている項目を中心に説明します。

 一般会計の〈収入〉では,「会費」が予算よりも24万円余り上回りました。個人会員の2013年度会費収入が大きく伸びたことと,団体会員の会費納入も予算より若干増えたことによります。また一昨年度から発足した学生会員は,3人が申請されています。

 会誌『図書館界』の売上げは,予算を6.6万円上回りました。しかし「広告料収入」については予算を5万円下回りました。出版業界等の厳しさは増しており,引き続き努力が必要と考えています。さらに「雑収入」については予算よりも10万円あまり上回りましたが,これは匿名のカンパとともに,サーバー管理会社のトラブルに伴う賠償金の入金なども影響しています。なお,昨年度は雑収入に含めていたCiNii使用料を「『界』の売上げ」に移しました。  一方,〈支出〉に関しては,節減に努めた結果,「調査研究費」を除く全ての項目で予算額を大きく下回ることができました。「研究助成費」については,研究大会や図書館学セミナー,ブロックセミナーの開催にあたり,会場費等の経費の節減に努めていただいた結果です。「国際交流費」は,特段の事業がなかったことにより支出はありませんでした。「通信費」については,電子メールの活用などにより10万円近く予算を下回りました。なお事務所で会員管理を行っていた事務用パソコンの故障に伴い,新しいパソコンを「予備費」から9万円余りで購入しました。

 特別会計については,『図書館資料の目録と分類』(増訂4版)が,150万円の予算に対して200万円と売上げを伸ばしています。ただ,『本をどう選ぶか』『公共図書館の役割を考える』『新・大学生と図書館』『子どもの読書環境と図書館』など旧刊分は,いずれも低調でした。昨年度好調だった『構造的転換期にある図書館』『図書館・図書館学の発展』についても売上げは大きく下回りました。『図書館の発展を求めて』は販売委託先からの入金が滞っており,予算を大きく下回っています。
 〈支出〉については,『図書館資料の目録と分類』(増訂4版)の増刷はありましたが,新たな出版物がなかったため,定額の「事務局費」を除き,予算を下回りました。「役員選挙費」についても,50万円の予算に対して41万円と,予算内に収まりました。全体として次年度繰越金が増えました。

 第2特別会計,いわゆる「図書館研究奨励賞基金」は,2012年度授賞者が1名あり,奨励賞副賞10万円を支出しました。

 このように財政面では一般会計の厳しさが年々増しています。例年のことですが,歳出削減に努めるとともに,個人会員数を減らさないこと,団体会員の継続・拡大が大事だと考えています。個人会員,団体会員の入会に向けて,会員の皆さまのご協力を引き続きお願いしたいと思います。

2.2013年度事業計画案

 ここに提案する事業計画・予算案の審議と承認は評議員会(6月2日開催)の役割ですが,会員の皆さまの声を反映させたいと思いますので,電子メール(アドレス:nittoken@ray.ocn.ne.jp)等で,事前に事務局までぜひご意見をお寄せください。

 〈研究活動〉では,『図書館界』の年6回刊行,研究大会,図書館学セミナー,ブロックセミナー,研究例会があります。ブロックセミナーは全国各地で開催することを目指しております。昨年度は,佐賀県と福島県で実施しました。今年度も2か所程度は開催したいと思いますので,評議員,会員のみなさまのお申し出をお待ちしています。なお,今年度は上海にて国際図書館学セミナーが開催される予定であり,国内でも図書館学セミナーが開催されます。

 〈研究の奨励と会の拡大に関わる活動〉では,「留学生への『図書館界』の無料頒布」が13年目に入ります。これは,図書館研究の奨励と国際交流の一環として,日本で図書館情報学を学ぶ留学生に,1年間を単位にして『図書館界』を寄贈し,図書館研究や図書館の理解に役立ててもらうという趣旨ですが,該当者が近年おられません。是非ご活用下さい。詳しくは73ページを参照して下さい。

 昨年度末に2013-2014年度の役員選挙が行われ,新たな役員が選出されました。会員の皆さまのご協力に感謝します。

3.2013年度予算案

 一般会計の「会費」収入については,個人会員・団体会員ともに会員減少の実態にあわせて10万円減額しました。もちろん新規の入会者を増やすことと,継続して会に参加していただかないと,この額のクリアも困難となります。広告料につきましても実態に合わせて35万円に減額しました。出版不況に伴い広告元が減っていますが,これについても新たな広告元の獲得に向けて努力します。  〈支出〉については,研究活動の停滞を引き起こさないよう配慮しながら,昨年度の実績をもとに節約できるものを再吟味して計上しています。「研究助成費」については,図書館学セミナー開催年にあたるため手当てしています。また「雑誌刊行費」については,昨年度実績も考慮して同額としました。「研究調査費」「研究助成費」「事務局費」などについても昨年度と同額としました。

 特別会計の〈収入〉では,『図書館資料の目録と分類』の更なる増刷を前提に,昨年と同様の150万円を計上しました。他の出版物については,最近の売上げ,在庫数なども考慮して,全体的に減額しました。
 一方〈支出〉の方では,2013年度は国際図書館学セミナーが上海での開催を予定しており,「上海図書館学会との交流費」を30万円計上しました。

 「第2特別会計」につきましては,奨励賞対象者を1名として計上しています。

4.事務局との連絡など

 会の財政を支えるのは会員皆さまのお力です。引き続き,会費の前納,会員拡大,資料販売等に,皆さまのいっそうのご協力と積極的なご発言をお願いいたします。
 なお,事務所は毎週月・木曜日,午後1~5時に事務局員が常駐しておりますので,連絡はその時間帯にお願いします。ただし,緊急の場合以外はなるべくファックス,電子メール,文書でご連絡ください。

(まえだ あきお)


素直な気持ちで,基本に立ち返って

編集委員長 高鍬裕樹

 今期より『図書館界』編集委員長を務めることとなりました。若輩にて行き届かないところもたくさんあるかと思いますが,編集委員や理事,評議員,また会員の皆さまのお力添えをいただきながら,『図書館界』の発展に尽力していきます。

 1.《論文》と《現場からの提言》

  『図書館界』は査読付き論文誌です。そのため,運営の最も大きな柱は,図書館情報学の新しい学術的知見を掲載して会員の皆さまにお知らせすることだと考えております。その意味で,《論文》の掲載が『図書館界』の要となります。
 一方で,実践的な工夫・スキルにかかわる知見もまた重要なものだと思います。学術的な色彩は少し薄かったとしても,その重要性は学術的な論文に劣るものではありません。『図書館界』の読者が多様で,現場の図書館員の方々も多いことを考えれば,これは当然のことといえます。このような文献を掲載する枠として,《現場からの提言》があります。《論文》にも《現場からの提言》にも,会員の皆さまからの投稿をお待ちしております。

 2.特集・企画等

  連載企画「図書館実践(サービス)の最前線」が2012年度で終了となりました。1年半をかけ,16本の寄稿を掲載した長期連載でした。新しい企画などについては今のところ計画はありませんが,取り上げるべき重要なトピックがあれば,単発の企画または連載企画として実現していきたいと思います。

 3.書評・新刊紹介

 下の「報告」にもあるとおり,昨年度は書評・新刊紹介合わせて31本になりました。2010年度に前任の編集委員長が,計26本の書評・新刊紹介を評して「過去最大の本数であったかもしれません」としていますが,それをさらに5本上回りました。
 書評や新刊紹介も会員の皆さまへの重要な情報提供ですので,適正な本数の情報提供を心がけていきます。

 4.『図書館界』64巻の報告

 昨年度の『図書館界』は以下のような内容でした。投稿・寄稿くださった皆さまに御礼申し上げるとともに,引き続いてのご協力をよろしくお願い申し上げます。

  • 《論文》12本
  • 《現場からの提言》1本
  • 《特集:図書館実践(サービス)の最前線》9本
  • 《特集:第53回研究大会》グループ研究発表5本,シンポジウム・パネリスト発表5本,討議
  • 《書評》14本 ・《新刊紹介》17本
  • 《エコー》1本

(たかくわ ひろき 大阪教育大学)


研究活動の充実をめざして

研究委員長 前川敦子

 このたび研究委員長の大任をおおせつかりました。研究委員としての経験も十分ではなく,行き届かないと思いますが,会員の皆様と研究委員のお力を借りながら,歴史ある当会の研究活動を引き継いでいきたいと考えています。
 以下,会員間の研究成果の発表・交流・学習等の場として,研究委員会が今年度担当する4事業をご紹介します。

 1.研究大会の開催

 2013年度(第55回)研究大会は,2014年2月~3月に,大阪を会場に2日間の予定で開催します。1日目は会員個人と研究グループの研究発表を行う場として設定します。2日目のシンポジウムは図書館に関わる幅広く重要なテーマをとりあげ,多角的に論議を行います。
 大会関連の日程は,本誌65巻3号(9月)に個人発表等募集要項の掲載,4号(11月)に大会予告,5号(1月)に正式な大会案内掲載の予定です。 

 2.研究例会・特別研究例会の開催

 日常的な研究・活動報告の場です。主に大阪市内を会場に年間7回程度開催し,記録を『界』誌上に報告します。回を重ね,今年度秋には300回を迎えます。会員・非会員を問わず申込不要・無料で参加可能とし,広く開かれた形で開催しています。発表に関心がおありの会員はぜひお知らせください。なお研究グループは,研究成果の公開を,研究大会のほか,研究例会での発表で行うこともできます。
 特別研究例会は,評議員会の日程にあわせて午前中に開催します。本年度は,前号および本号p.66のように,6月2日(日),京都大学文学部にて河井弘志氏をお招きして開催します。

 3.図書館学セミナーの開催

 図書館学セミナーはその時々にふさわしいテーマを設定し,集中して論議を行う場です。今年度は兵庫地区で,10月に1日の日程で開催します。

 4.グループ研究への助成

 助成の要件は,会員7名以上で研究グループを構成し,テーマをもって研究活動を実施,その成果報告を行う,というものです(詳細は本号p.81をご参照ください)。助成は各グループから提出された研究計画を研究委員会で審査し,理事会で承認を得たグループに年額3万円(申請により増額)を助成いたします。今期は12グループに助成を行っています。2年を1期としていますが,新たなグループ結成等につきましては研究委員会にご相談ください。

 (その他)

  • 研究大会・セミナーなどの講師のお願い・会場提供のご相談をさせていただく場合がございます。ご協力いただきますよう,心からお願い申し上げます。
  • 研究委員は委嘱制ですが,就任希望や推薦等があれば,研究委員会までお伝えください。例会・大会等のテーマについてのご希望がありましたら,研究委員までお知らせください。皆様のご協力ご指導が必要不可欠です。
     異なる館種,現場と理論が有機的に補完しあって生まれる成果が,本会の研究活動の大きな特質と考えています。引き続き,会員の皆様のご協力をお願い申し上げます。

(まえかわ あつこ 神戸大学附属図書館)


ブロックセミナーの企画をお待ちしています

ブロックセミナー担当 岸本岳文

 ブロックセミナーは,各ブロックの会員の申し出によって開催されます。開催にかかわる経費は,原則として全額を日本図書館研究会が負担します。

 本会の諸研究活動は,京阪神を中心に開催されることがほとんどであるため,ブロックセミナーは会員の最も身近なセミナーとなります。また,セミナーの開催は各地での会員の交流を深めていただく良い機会となるでしょう。ブロック単位での活動を活発にするためにも,できるだけのお手伝いをさせていただきますので,是非ご相談ください。
 みなさんからの積極的な企画をお待ちしています。
 企画については担当理事の岸本,谷嶋正彦,志保田務にご相談いただくか,下記の事務局あてご連絡ください。

 連絡先:日本図書館研究会事務局
 電 話:06-6731-8739(月・木曜13時~17時)
 E-mail:nittoken@ray.ocn.ne.jp 

(きしもと たけふみ 京都産業大学)


過去の事業計画等