TOP > 大会・研究会等 > ブロックセミナー > 2005年度 > Update: 2006.7.24

日本図書館研究会 中国ブロックセミナー報告


日 時:
2006年3月27日(月)13:00〜16:00
会 場:
島根県斐川町立図書館
講師:
北村幸子氏(学校図書館を考える会・近畿 代表/大阪教育大学非常勤講師)
テーマ:
「公共図書館と学校図書館の連携・公共図書館の学校図書館への支援を考える」

報告

 2006年3月27日(月)午後1時から4時まで島根県斐川町立図書館において,山陰では2回目となる中国ブロックセミナーを開催しました。山陰両県を中心に四国・九州からも,公共図書館・学校図書館職員,司書教諭をはじめとした教員,ボランティアなど,60名を越す参加者がありました。

 今回のテーマは,「公共図書館と学校図書館の連携・公共図書館の学校図書館への支援を考える」でした。島根県内の市町村でも,ここ数年,わずかずつながら小中学校への学校司書の配置が進んでいることを踏まえて,この始まったばかりの公共図書館と学校図書館の連携や公共図書館の学校図書館への支援のよりよいあり方を考えるという趣旨でした。

 開会に当たって,山本昭和理事が挨拶をしました。

 そして,学校図書館を考える会・近畿代表の北村幸子さんが,「教育・図書館の可能性を拓く学校図書館づくり」と題して講演を行いました。
 冒頭,「学校図書館について,山陰で取り組まれていることより,大阪は少し前を行っていると思います。そこで,大阪での取り組みから見えてきたことをお話しし,これを批判的にとらえてもらったうえで,これからの方向を考えていただけたらと考えています。」との話から始まりました。
 はじめに近年の動向の話があり,最近進んだこと,また激しく動いていることとして,図書館利用教育,また,図書館と情報教育の動向についての紹介がありました。次に,学校図書館のモデル事業について,2006年度から始まる新事業(学校図書館支援センター推進事業)ではその方向性が変わってくる,特に人のあり方について,これまでのモデル事業では曖昧だった人の部分が,支援スタッフなどといった形ではっきりしてきていることの指摘がありました。
 そして,学校図書館のはたらきに話が進みました。まず,塩見昇先生の「図書館の教育力」の紹介がありました。続いて,大阪(箕面・豊中・羽曳野)の実践について報告がありました。3市の特徴として,一つ目に,学校司書は嘱託等ではあるが自治体の裁量で工夫するところはする。たとえば,児童がいる時は必ず囚にいるようにすることや,職員会議にも出席できるようにする,また,研修も受けられるようにするといった形になっていること。二つ目に,それまでなかった,公共図書館が充実していたところで学校図書館の充実に取り組んだこと,があげられました。その上で,北村さんの羽曳野での実践についての紹介がありました。
 最後に,税金の「費用対効果」が厳しく問われる状況の中,学校司書はどうあるべきかという話から,今後の課題についての話に移りました。今後の課題として,公共図書館と学校図書館との情報交換の重要性や,先生方に学校図書館と資料を知ってもらうための司書教諭・学校司書による取り組みの必要性,そして,はじめにあった図書館利用教育に関連して,メディアリテラシー教育の重要性を述べられました。その中で,「学校図書館が公共図書館を支える」「学校教育の中で図書館を使えるようになると,公共図書館がもっと使えるようになる」という考え方は,公共図書館側から学校図書館を見るうえで大切にすべきことと感じました。
 会場からは,「ボランティアとの協力が求められ,学校図書館にもボランティアが入ってくる状況で,学校司書はどこを目指すべきか」との質問があり,「今の世の中,学校図書館に専門的な人をつけるということは,厳しいものを求められているのではないか。この状況で学校司書が生き残るためには,学校司書の専門性を考えること・見直すこと,そして力量を高めることが重要になってくる」と答えられました。

 休憩後,東出雲町と松江市の学校司書の実践報告を行いました。

 一番目の東出雲町では,2005年度に初めて学校司書が1名,町立東出雲中学校に配置されました。この配置から1年間の状況について,「東出雲中学校のはじめの一歩」と題して,同校学校司書の実重和美さんが発表を行いました。
 この中で,年度当初に行った図書館内改装の様子や,前年度から約10倍になった貸出冊数など1年間の利用状況,そして年度末に生徒に行ったアンケート結果の報告がありました。また,「本来の学校図書館の可能性を引き出すためには,学校全体の中で学校図書館の役割や目的が計画的,組織的に持たれなくてはならず,そのためには,学校図書館の方針等を決定する組織がどうしても必要になった。」ということから,新年度より「学校図書館運営委員会」を立ち上げることになったこと,町立図書館の司書のサポートもあり,新年度から町立図書館とあわせて町立小中学校(小学校4校・中学校1校)の電算化に着手できるようになったことの報告がありました。

 続いて発表を行った松江市は,2005年3月に旧松江市と周辺7町村が新設合併し,現在の松江市となりました。このうち旧松江市のみ,平成13年度から学校司書の配置を行っています。当初は,小学校・中学校に各1名ずつの配置でしたが,その後変更や増員があり,発表時点では小学校3校に各1名の配置となっています。こういった状況を「松江市学校図書館実践報告」と題して,城北小学校司書の竹中庸子さん,川津小学校の新泰恵さん,乃木小学校の富谷美紀さんが報告(代表して竹中さんが発表)を行いました。
 はじめに,松江市の学校図書館整備のあゆみ・現状の報告がありました。松江市内にも12学級未満の小中学校が多く,12学級以上の学校は全校発令されているものの,市全体の司書教諭の発令率は小中学校共に60%であること,また,小学校ではほとんどの学校で読み聞かせなどの読書支援活動にボランティアを活用していることなどの,ボランティア活用状況が報告されました。続いて,学校司書が配置されている3校の紹介があり,図書館改装の様子や授業での学校図書館の利用事例,順調に伸びている貸出冊数の推移といった報告がありました。さらに,今後の課題として,「全校に司書教諭・学校司書の配置と市教育委員会による組織化」「各校における校内体制づくり・司書教諭との「協働」(役割の明確化)」「市立図書館との連携」などがあげられました。

 最後に,白根一夫評議員が閉会のことばを述べ,終了しました。

 今回,予想を越える多くの参加をいただきました。今回テーマとした,「学校図書館」は,隣県・鳥取県の片山知事の積極的な発言もあり,山陰でも注目されるようになってきた表れではないかと感じています。

(文責:奥野吉宏 斐川町立図書館)