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日本図書館研究会 四国ブロックセミナー報告


日 時:
2012年1月23日(月)13:30〜16:30
会 場:
徳島県立図書館
テーマ:
「県立図書館と市町村立図書館−連携・協力のあり方−」
講 師:
千歳則雄氏(滋賀県・野洲図書館長)

千歳氏講演

 現在の滋賀県は,統計上いくつかの内容で高い位置を占めているが,こうなるまでには30年という時間がかかった。滋賀県に市町村図書館が次々とできた原点は,県立の図書館振興策・基本構想にある。その理念は,滋賀県立図書館長だった前川恒雄さんと『中小レポート』『市民の図書館』に拠っている。強い個性を持った人材が市町村図書館に集まり,お互いにコミュニケーションをとりながら各館の運営にあたった。そして県立図書館が精神的なバックヤードとして市町村図書館を支えていた。1990年代になると人口1万人程度の小規模町村にも図書館がつくられたが,1980年当初のエネルギーを身をもって感じることがないまま育っていった図書館員も増えた。図書館運営の方向性は変わらないが,エネルギーは薄まったかもしれない。図書館に限らず仕事というものはルーチン化しがちで,最初の思いや理念は少しずつ薄れていく。そうならないように熱意を持ち続けることが重要である。予算・人員が削減され,管理運営の問題が次々と出てくるが,そのときは『中小レポート』『市民の図書館』の理念に立ち戻ることが大切である。

 資料提供は公立図書館にとって本質的・核心的なものであって,他の業務に優先する。住民に要求された資料を手渡す,リクエスト等に心を配りながら選書する,やっている仕事の本質は県立も市町村も同じである。県立と市町村は同じ目的のために同じ仕事を分担してやっているという認識が大切だ。

 『平成元年度徳島県図書館ネットワーク研究会報告書』には,機械でつながる前に人と人とのつながりが大切と書かれている。便利な横断検索を構築するだけでなく,人がつながることこそネットワークである。資料提供により図書館のニーズが広がり,要求が深まることは必然。図書館がお互いに支えあうのがネットワークのあるべき姿ではないか。

 県立図書館は市町村に比べて蔵書数やスタッフ・資料費が多く,レファレンスもできて頼りになるというイメージがあるが,現在一億円を越す資料費を持つ県立図書館はごくわずかである。しかし県立図書館の力は新刊購入数だけではない。これまで蓄積された蔵書の厚みや職員のマンパワー等も合わせてこそ図書館の実力である。同じ目的を持ち,同じ方向を向いて仕事をしていく上で,人と人とのつながりが大切である。県立図書館と市町村図書館がコミュニケーションをとり,お互いにつながることから始めることだ。資料を提供することが使命であるという図書館の信念が揺らいではいけない。図書館がコミュニケーションを取り合い,人がつながり資料提供をつなげよう。

意見交換:図書館連携・協力のあり方について

  【「平成元年度徳島県図書館ネットワーク研究会報告書」について】
・阿南市立阿南図書館 櫛谷氏
 徳島県図書館ネットワーク研究会は,全ての県民に図書館資料を届けるため図書館間のネットワークを作り上げることを目的に発足。当時は県立の協力車の運行もなく,検索端末もなかったので,他館への借用依頼が大変だった。手間はかかったが,図書館間のコミュニケーションは今より取れていたように思う。今は端末で検索し,ボタン一つで依頼が完了する。これでは機械に使われているだけではないのか。まず人のネットワークがあり,その次に情報と物流のネットワークがくるべきでないか。
・四国大学 新氏
 ネットワーク研究会では図書館連携について話し合いを重ねた。現在はこの研究会は終了しているが,反省点として県立図書館の予算減少など状況の変化への予測がなく,現状に対応できていないことと,人を中心としたネットワークが構築できたのかという2点が挙げられる。

【図書館協力の現状】
 高知県立図書館より高知県内の相互協力の状況が報告された。セミナー参加者からはそれぞれの館で直面している問題について様々な質問が出され,意見交換を行うとともに人がつながることの重要さを改めて感じるセミナーとなった。

(文責:松村信子 阿南市立羽ノ浦図書館)