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第4回国際図書館学セミナーへのご招待

日本図書館研究会国際交流委員会

はじめに / 第1日目の概要 / 第2日目午前の概要 / 第2日目午後の概要

参加要項・プログラム等

日時:
2005年10月23日(日)〜24日(月)
場所:
同志社大学寒梅館地下大ホール

はじめに

 今年も日本図書館研究会・上海市図書館学会共催の国際図書館学セミナー開催の時期が近づいてまいりました。ご案内にありますように,日程は,きたる10月23日(日)より24日(月)の2日間,場所は,同志社大学寒梅館の地下大ホールです。

 日程はすでに昨秋,上海との協議で決めたのですが,その後,日本図書館情報学会の研究大会が今年は10月22日〜23日に三田図書館情報学会との共催で,またこのたび塩見昇氏が理事長に選出された日本図書館協会の全国大会が当国際セミナーのすぐ後の10月26日〜28日に開催されるわけであり,時期的にご迷惑をおかけすることを申し訳なく思っております。

 会場は,京都市営地下鉄「今出川」駅で下車,烏丸通りに沿って北へ約4分,地下大ホールへはエレベータのほか,階段で降りる複数の方法があります。1階は400名以上を収容する大ホールであるところから,一人でも多くのご参加がありますように願いつつ,以下,当日の概要(現段階での予定につき,若干の変更の可能性あり)を申し上げてご参考に供したく思います。

第1日の概要

 第1日(10月23日日曜)の午後には,まず13時の開会と同時に中国からのゲストスピーカをご紹介します。続いて日本側代表そして中国側代表に,それぞれご挨拶を兼ねて,当該国の図書館(学)の現状と課題を概観する内容で,限られた時間ではありますが,講演をお願いいたします。その際,それぞれの国の言葉で話されますから,例えば中国語で話されるときには,『要綱』の日本語のページをご覧になっていてください。

 日本側は,日図研理事長・塩見昇氏で,演題は「日本における図書館と図書館研究の現状と課題」,講演要旨は,図書館に寄せる社会の期待が高まる一方で,図書館の設置や設備・充実,資料費の確保や職員体制等には厳しい状況,課題が噴出しているのが日本の現況である。そうした現実を直視し,新たな展望を拓くような図書館研究の内実が問われている。本会と上海市図書館学会とのあいだで重ねてきたこれまでの日中交流の経験や成果をも振り返り,今後の交流を通して相互理解が一層深まり,それぞれにおける図書館研究にとってよい刺激となり得る展開について考えてみたい,とあります。

 中国側は,劉暁丹氏(上海図書館情報諮問・研究センター上級エンジニア)で,演題は「上海市における図書館の事業発展の現状と課題」,講演要旨は,近年,上海市の図書館事業は上海の都市建設に応じて目覚ましい発展を遂げた。文献資源の建設の多様化,社会化,ネットワーク化に伴い,上海市の各形態の図書館は共同施設と共同利用を中心に,図書館事業への協力業務を展開してきた。上海市図書館は上海市中央図書館システムを構築し,上海市各形態の図書館の文献・情報資源,人力資源およびサービスをまとめて最適化させ,地域文化事業の発展を有力に推進していた。また,上海情報サービスポータルサイトを設立し,図書館事業の真の情報共有を実現させ,社会全体に対して知識サービスを行うというパブリックサービス理念を実現させた。上海図書館は,以上二つの路線に沿って上海市の図書館事業の発展のセントラルロールを果たしている。今回は日本図書館研究会との交流を機会に,上海市における図書館全体の発展現状を分析し,図書館発展の中の問題について考えてみたい,とあります。
 5年前,当セミナーを日本側と締結するのに際して偉大な功績を果たされた,上海図書館長呉建中氏が双方の友好関係を重んじて自ら書かれたセミナー開催への挨拶文を,劉氏が代読される予定です。

 そのあと,研究発表に移ります。前回とは異なり,全般的に若手/新進気鋭の図書館員,研究者の登場です。最初の発表は,筑波大学大学院図書館情報メディア研究科博士後期課程の梁桂熟氏で,テーマは「中国のサブジェクトゲートウェイの現状と課題」,発表要旨によりますと,サブジェクトゲートウェイについて,基本的には特定主題を対象にして,その主題の研究に有用と考えられる信頼性の高いインターネット情報資源を選別・収集し,その情報資源についての目録を作成し,ブラウジング・検索ができるようにするシステム/プロジェクトである。2002年3月,中国科学院では,国家科学デジタル図書館(CSDL)計画のもとにサブジェクトゲートウェイを構築することになった。本研究では,問題点を指摘するとともに,その基本的特徴,発展・現状,情報資源組織と技術支援などに焦点を当てて論じるとあります。

 2番目の研究発表は,奈良女子大学附属図書館の呑海沙織氏で,テーマは「学術情報基盤の形成−CADLISとNII」,発表要旨は,学術情報基盤形成の体現として,中国におけるCADLIS(中国高等教育数字化図書館プロジェクト:China Academic Digital Library & Information System)及び日本におけるNII(国立情報学研究所 National Institute of Informatics)を取り上げ,日中の学術情報基盤について論じる。CADLISは1998年に設立されたCADLISおよび2000年より開始されたCADALが有機的に統合され,新たに立ち上げられた学術情報基盤プロジェクトである。一方,NIIの歴史は1983年に設立された東京大学情報図書館学センターまで溯ることができる。全国的な学術情報基盤を形成することを目的に設置・運営されている,CADLISおよびNIIを比較・分析することによって,今後の学術情報基盤のあり方について考える,とあります。

 3番目の研究発表は,上海図書館中国文化名人筆記館副館長の祝均宙氏で,テーマは「近代在日出版の中文雑誌について」,発表要旨は次のとおりです。1840年から1949年までは,中国の社会形態が封建社会制度から反封建反植民地社会に移行する過渡期であり,また清政府が200年以上の封建制度統治を終結し,中華民国政府が成立した時期である。このような歴史の背景の下で,一部の有識者は,雑誌という文化媒体を利用し,雑誌を救国の戦場および世論の喚起の場とし,自らの思想や見解を述べた。中国歴史の大舞台において大きな波瀾を巻き起こした。近代に出版された2万3千種類余りの雑誌の中には,中国人が海外で創刊した400種余りの中文雑誌が含まれていた。そのうち,日本一国で出版されたのは200種ほどであった。本発表は,マクロの観点から3つの歴史段階を分けて,個々の歴史段階で出版された雑誌に対し,特定の歴史背景,社会要素,雑誌内容および特長などの面から,1898年に創刊された『清議報』から1945年5月に出版された『華文大阪毎日』終結までの全体過程をまとめて述べる。それら雑誌の出版は,中国近代歴史上に発生した重大な事件および世論の方向に影響し,人びとに歴史を真剣に反省させ,今日を重んじて明日を展望するのに貴重な歴史文献資料となる,とあります。

 第1日目の発表が終了したあと,寒梅館7階にあるレストラン「SECOND HOUSE will」にて立食パーティが開かれます。眼下に東山三十六峰が広がるすばらしい眺望が見渡せます。ぜひ,パーティにもご参加くださって,中国・上海からのゲストや発表者,そして参加者の皆様と楽しいひとときを過ごそうではありませんか。

第2日午前の概要

 第2日(10月24日月曜)の午前中は,前日に引き続き研究発表です。なお,第1日目の研究発表のときもそうですが,発表後10分ばかり質疑応答の時間が設けられております。通訳がつきますので,ご遠慮なく質問をお出しください。

 さて,4番目の研究発表は,上海図書館員の夏紅衛氏で,テーマは「公共図書館視覚障害者サービスについて」,発表要旨は,視覚障害者は公共図書館の重要なサービス対象であり,視覚障害者に各種のサービスを提供するのは公共図書館の基本的な職務である。本発表は上海図書館の視覚障害者へのサービスを紹介・評価することにする。発表は以下の三つの部分から構成される。第一,公共図書館の視覚障害者へのサービスの現状および分析,国内海外の視覚障害者へのサービスを整理し,視覚障害者へのサービスの必要性と特殊性を指摘し,また技術の進歩にしたがってサービスを改善していく重要性および協調性に言及する。第二,上海図書館の視覚障害者へのサービスおよびその経験の紹介。社会の力を利用し,上海郵政局と協力し,テレホン貸出し業務の推進,即ち「視覚障害者が電話で本の貸出しの申し出をする→図書館が本や文献資料を提供する→郵政局が無料で視覚障害者に届ける。」の新しいサービス方式である。第三,発表者の経験から如何に視覚障害者へのサービスレベル及びサービスの質を高めるかを提言する予定です。

 研究発表の最後は,京都大学人文科学研究所の梶浦晉氏で,テーマは「日本における中国開版典籍の収蔵−仏教典籍を中心として」。発表要旨は,江戸時代以前において,日本の思想・学術の多くが中国や朝鮮半島の影響を受けていたことは周知の事実である。ことに中国文化の影響はおおきく,思想・学術の伝播の媒体である典籍も多数もたらされている。こんにち日本国内には多数の漢籍が伝存していることはよく知られており,主だった収蔵機関では《漢籍目録》あるいは《和漢書目録》などと呼ばれる目録が編纂され,その概要を知ることができる。また主要な漢籍収蔵機関の目録をおさめたデータベースも構築されつつある。これら目録やデータベースによって日本国内の漢籍の収蔵状況はおおむね知ることができるのであるが,仏教典籍の収蔵状況についてはまだ充分とはいえない。本発表では,日本における中国開版仏典の収蔵の現状を紹介し,漢訳および中国撰述仏典などの日本への伝来や書写・刊行,およびその特質について考える,とあります。

 昼食時間は込み合いますので,少し早い目にお昼の時間にはいり,午後からは,事例研究を5氏によって発表がなされます。いずれも質疑応答を歓迎しております。

第2日午後の概要

 1番目の事例発表は,前日に講演をなさった劉暁丹氏が「公共図書館の知識付加価値サービス−上海図書館の都市新職業開発及び就職トレーニングへの貢献」というテーマで発表されます。発表要旨は,未来の図書館の発展方向の一つを代表する知識付加価値サービスは,上海図書館が今日まで求め続けてきたことである。上海図書館はすでに約15種類の知識付加価値サービスを開発・運営しているが,今年,上海市の先進製造業および現代サービス業の発展目標に応じて,都市就職問題に対応するため,上海図書館情報諮問・研究センターは,上海市労働・社会保障局と協力して「競合情報分析員」という新しい職業を開発し,就職先の種類を開拓して,就職の機会を増加させた。本発表では,「競合情報分析員」という職業の開発背景,および上海図書館情報諮問・研究センターの役割について述べたい,とあります。

 2番目の事例発表は,上海図書館業務主管の朱普徳氏で,「上海図書館読者の統計」というテーマです。発表要旨は,上海図書館読者管理システムは,知能カード(ICカード)技術を取り入れたコンピュータ・システムである。当該システムは,ICカードを読者用の閲覧証にし,読者の身分と登録情報を記録する。ICカード閲覧証は,上海中央図書館と傘下の各分館に来館する読者の身分と登録の有効性の認証および全来館者数の登録を自動的に行うことができる。当該システムは,毎年延べ数百万人の読者の来館を登録し,さまざまな角度から超大規模の読者データを統計し,各種の統計諸表を提供することができる。それによって,図書館のサービス業務の量的分析と研究を実施し,図書館の科学管理レベルとサービスを強化,向上させる。本発表は,当該システムの統計機能を利用し,上海図書館の読書統計データを紹介する。

 3番目の事例発表は,国立国会図書館関西館アジア情報室の鴇田潤氏が「国立国会図書館関西館における中国情報の収集と提供」というテーマで,発表要旨は,国立国会図書館関西館アジア情報室は,現在,中国語図書22万冊,同雑誌3,800タイトル,同新聞330タイトルを所管している。資料の収集は,購入のほか国際交換を行っており,また現代情報の収集にも力を入れている。アジア情報研修の開催,アジア情報機関ダイレクトリーの作成など,図書館協力活動に取り組んでいるが,特に,中国国家図書館との日中業務交流は本年,25周年を迎え,さらなる発展を目指しているということです。

 4番目の事例発表は,大阪市立中央図書館サービス課外国文献担当の小笠原智香氏で,テーマは「大阪市立中央図書館における多文化サービス−中国語図書を中心に」,発表要旨は,1996年7月のリニューアルオープンより外国資料コーナーとして英語・中国語・韓国/朝鮮語のほか,タガログ語・ベトナム語など範囲を広げてのサービスを開始。小説・実用書・児童書を中心に収集しており,公共図書館ならではの多文化サービスを展開している。その現況と大阪市立図書館としての課題について報告する。

 事例発表の最後は,国際交流基金関西国際センター図書館の浜口美由紀氏で,テーマは,「独立行政法人国際交流基金関西国際センター図書館における中国人利用者へのサービス」です。発表要旨は,国際交流基金関西国際センターは,日本語研修施設として1997年に設置され,当図書館は,研修参加者の日本語学習や日本研究などをサポートしている。主な収集対象は,日本をキーワードとした100言語以上の多言語資料である。中国語資料の収集や中国人研修参加者への図書館サービスの紹介とともに,毎年外国人司書の「司書日本語研修」に参加している中国人司書との交流について,紹介を行うことになっています。

 そのあと,逐次通訳付きの限られた時間ではありますが,日本側,中国側各数名ずつ登壇していただき,質疑/総括および今後の日中交流/国際セミナーのための意見交換を行いたいと存じます。明日の日本と中国におけるライブラリアンシップの相互理解と発展のために意義あるものとなるよう,願っております。

 最後に中国側代表と日本側代表のあいさつで閉会といたしたく存じます。

(文責:渡辺信一 国際交流委員長)